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パヨカカムイ
2部分:第二章
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第二章

 そのうえで家の中に本当に戻る。そのうえで夫婦で休んだ。だがその夜。痩せこけて顔中髭だらけのみすぼらしい老人が彼の夢の中に出て来た。そうして彼に問うのであった。
「シャクシャじゃな」
「はい、そうです」
 彼は老人の問いに対して素直に答えた。夢の中は真っ暗闇で彼と老人だけがいた。一対一で老人と向かい合って話をしていた。
「そうか、御主がな」
「あの、御老人」
 シャクシャは老人に対して尋ねた。
「どうしてこちらに」
「わしがそなたの夢の中にやって来たのは他でもない」
「夢の中に」
「左様、ここは夢の中じゃ」
 まずはそのことを述べるのであった。
「夢の中に入ることはできるのは人ではない」
「人ではないというと」
「わしはこれでもカムイなのじゃよ」
「カムイですか」
「左様、カムイじゃ」
 こう名乗るのであった。つまり自分は神であるというのだ。しかし自らそう名乗ってもその顔はみすぼらしくあまりカムイには見えないのであった。
「だからここに入られたのじゃ」
「そうでしたか。それで」
「とはいってもあまりいいカムイではない」
 そのみすぼらしい顔のままシャクシャに述べた。
「あまり大きなことを言える身分ではない。何しろわしは」
「はい、貴方は」
「パヨカカムイなのじゃからな」
「貴方がそうなのですか」
「そうじゃ。今はこの家におる」
 そのことをシャクシャに対して告げた。
「ここにな。丁度玄関のところにおる」
「玄関のところ!?といいますと」
 その話を聞いてあることを思い出した。寝る前のことだ。
「まさかあの」
「そう、あの木像じゃ」
「ではやはりあれが貴方様の」
「そういうことじゃ。気付かなかったじゃろう」
「はい」
 率直にパヨカカムイに対して答えた。
「まさかあれだったとか」
「パヨカカムイとは気付かれぬものなのじゃ」
 このことを語りだした。
「気付かれればそれで終わりじゃ。貧しさをもたらす力はなくなる」
「はあ」
「これは御主も知っておるじゃろう」
 ここまで話したうえでシャクシャに対して尋ねてきた。
「パヨカカムイのことは。どうじゃ?」
「ええ、まあ」
 伊達にユーカラを語っているわけではない。このこともよく知っていたのであった。
「それは知っていますが」
「そういうことじゃ。それで気付かれたパヨカカムイはな」
 あらためて言葉を続ける。
「幸福をもたらしてその場から消えるのじゃ」
「では私の家にも」
「そなたの家だけではない」 
 彼は笑って言ってきた。
「この村全体のじゃ。よいか」
「ええ、まあ」
 何が何なのか半分わからないままパヨカカムイの言葉に応えた。
「村にとってよいことなら。是非」
「ふむ、よい心掛けじゃ」
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