第十四話
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何せ、自分にナイフを向けてきた人間である。今のこれも、医療行為ではなくただの人体実験であり、罪もない野良犬や野良猫で実験するより、この不良たちで実験したほうが心が痛まずに済むかも知れないという理由だ。
これで何かが間違って彼らが死んだりしても、葵は一切気に止めない。眉すら動かさないかもしれない。既に彼らは、葵にとって路傍の石より無価値な存在となっているのだ。葵の精神性は、常人とはかけ離れ始めていた。彼もそれを自覚している。そして、別にそれで構わないと思っているのだ。
彼の考えが、二人に伝わらなかったのはいいことなのだろう。こんな危険人物を娘たちの近くに置いておきたくないと、普通の保護者は考えるだろうから。
「・・・ま、これだけ治れば大丈夫でしょう。後遺症が残った奴は残念だけど運がなかったってことで。」
(実験への協力ありがとうございました。貴方たちへのお礼は、重症を治したことでチャラって事で)
やるべきことは終わったとばかりに、葵はドアへ向けて歩き出した。既に、彼らへの興味は一切ない。
(・・・あ、こいつら俺たちのこと警察に喋ったりしないだろうな・・・?)
一瞬不安に思ったが、すぐに月村家が何とかするだろうと考え直す。彼女たちの家系は特殊で、記憶を操作する力もあったはずだ。どうとでもなるだろう、と。
そこで考えるのをやめた葵は、未だに魔法という力の異質さ、強大さに慄いている二人を残し、外に出た。
―――後日、海鳴市爆発事件の捜査本部に、15人の少年が出頭した。彼らはその殆どが、体に大小の怪我を負っていた。
彼らは言うのである。『あの爆発は自分たちで起こした』と。ネットで知った方法で簡単な爆発物を作ったら、思った以上の威力が出たのだと。そしてそのせいで、彼らは怪我をしてしまい、入院していたために自首が遅くなったのだと。
だが、警察も馬鹿じゃない。事件現場を詳しく調査しても、爆発物の痕跡すら見つからなかったし、彼らが自白する程度の爆発物では、どんなやり方をしても天まで届く程の炎の柱が発生するわけがないのだ。その程度、科学捜査で簡単にわかる。
だからこそ、警察は彼らを問い詰めた。何を隠しているのかを知ろうとした。ひょっとすると、彼らの背後には過激派テロ組織のような存在がいて、彼らを身代わりにしているのではないかとすら考えた。
しかし、いくら調べても彼らの答えは同じ。壊れた玩具のように、『俺たちがやりました』と答えるだけで、どんな調査をしてもそれ以上の事は分からなかった。
結局、自白しているのだしこれ以上の捜査は意味がないとして捜査本部は消滅し、爆発事件の犯人は不良少年グループだったとされた。
彼らがその後どうなったのかは―――
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