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美しき異形達
第四十六話 横須賀その九
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「自衛隊にそんな余裕ないよ」
「お金がないのね」
「物凄い節約してるんだよ」
 アメリカ軍と違って、というのだ。
「海自さんだってな」
「そんなになの」
「だって予算がアメリカ軍と違うからな」
 それも桁外れにだ、やはりアメリカ軍の予算はかなり多い。それに対して自衛隊の予算即ち国防費はというと。
「あんなサービスもな」
「出来ないのね」
「精々カレー位だよ」
 その程度だというのだ。
「あと時々バーベキューか」
「バーベーキューはいいんじゃない?」
「それでも休日ああしてバイキングは出せないだろ」
 薊は菊にも言った。
「絶対に」
「そうね、それはね」
 菊も薊のその言葉に頷いた。自衛隊へのイメージを根拠として。
「江田島でも何かそうしたところにお金かけてない感じだったし」
「だろ?兵器とか人件費にお金はいっても」
「保養施設はなのね」
「アメリカ軍とは違うよ」
「そうよね」
「だからこれから自衛隊だけで国防をすることになったら」
 それはそれで、というのだ。
「ああしたものも食えないよ」
「そうなのですね」
 桜は薊のその言葉を聞いて少し残念そうに言った。
「それはまた」
「まあな、自衛隊にそこまで予算があれば」
「国民の税金をと」
「そうした批判も普通に来るからな」
 特にテレビのキャスターなり新聞記者なりが騒ぐ、これが日本とアメリカの決定的な違いと言えばそうなるか。
「毎週休日バイキングをするだけ贅沢とかな」
「それ普通に言うわね」
 菫も薊の言葉に頷く。
「日本だと」
「だろ?市民団体なんか特にな」
「騒ぐのね」
「あの連中騒ぐのが仕事だからな」
 そして彼等のその活動資金は『何処からか』出て来るのだ。このことも考えてみれば不思議なことであろうか。
「騒ぐよ」
「そうよね」
「まあ美味いものは食いたいよ」
 薊はバイキングの味を思い出しつつしみじみとして言った。
「正直なところな」
「それが第一なのね」
「ああ、本当にそこだよ」
 薊は鈴蘭にも答えた。
「美味いものがあるかどうか」
「それが大事よね」
「若しもだよ」
 ここで薊が言う仮定はというと。
「あそこにいるのがアメリカ軍じゃなくてイギリス軍ならな」
「帰って欲しいのね」
「あそこまずいんだよな」
 黒蘭に真顔を向けて問うた言葉だ。
「イギリスって」
「世界的な定説よ」
「だよな、それこそどんな料理でも」
「絶望出来るわ」
 期待しない方がいいどころかというのだ。
「あの国のお料理は」
「それだとな」
「いいのね」
「ああ、イギリス海軍じゃなくてよかったよ」 
 薊はかなり本気でこう言った。
「飯がまずいとそれだけでどうしようもないよ」
「まさにそれだけ」

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