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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、宣言する
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「なあ、知ってるか?《黒の剣士》の噂」
ずずず、と音を立てて紙パックに残ったジュースを飲み干しながら、男の所属するパーティのメンバーである少年が切り出した。
自他共に認めるゴシップ好きの少年は、ここのところ何かと噂になっている“とある剣士”の話題に興味津々らしい。

「最近噂になってるあれか。オレンジを専門に狙うPKK《プレイヤーキラーキラー》だっけ? 全身黒ずくめの」
「そうそう、そいつのことなんだけど……ここだけの話、どうもオレンジ“専門”ってのは少し違うらしいんだよなー。どうしてだと思う?」
「はぁ……」
幼い顔に得意気な笑みを浮かべながら、少年は男に問いかける。
自分が聞き集めてきた“とっておき”を披露する時、少年は必ずこうして勿体付けた言い方をする。
そんな少年の様子を見て、男は大きく溜息をついた。
これまでの長い付き合いから、この少年の趣味と、それに伴う“悪い癖”には嫌というほどに心当たりがある。

「お前なぁ……また攻略組連中の話を盗み聞きしたのか」
「へへへっ」
男は呆れ顔を隠しもせずに言うが、当の少年は男の呆れなど何処吹く風といった様子で、悪戯好きの子供のように鼻の下を指でこするばかりだった。
少年の悪い癖―――即ち、他のプレイヤー達が行っている会話の盗み聞きだ。
ゴシップ収集を趣味としているこの少年は、時折こうして信憑性の高い情報を“盗んで”くる。
《聞き耳》スキルを発動させながら街中を歩き回り、攻略組プレイヤー達の会話を盗み聞き、その内容をパーティメンバーである男に御披露目することを楽しみの一つとしているのだ。

「毎度毎度よくやるよな、お前。そんなことばっかやってると、そのうち痛い目見るぞ。いやマジで」
「あはは、大丈夫だって。別に犯罪ってわけじゃないんだし」
「ほんとに大丈夫なのかね、まったく……」
馬の耳に念仏、とはこのことを言うのだろう。
人の忠告をいとも容易く受け流す少年に、男は再び溜息ひとつ。
こういったタイプは、いつか本当に痛い目を見なければ直らないのかもしれない。
映画や推理小説などでは、少年のような人間が興味本位で厄介事に首を突っ込み、口封じのために犯人に消されるのがお決まりのパターンだ。
だからこそ、男はいつもこうして忠告しているわけなのだが。

「それに今回の話の信憑性はかなり高いんだぜ? なんたって《ユニオン》の連中が話してたことなんだからな!」
「げっ……!? お前、ばっかじゃねぇの!?」
しれっと言い放った少年に、男は血相を変えて叫んだ。
少年が攻略組から情報を盗んでくるのは毎度のことだが、今回ばかりは話が別だった。
よりにもよって《ユニオン》団員の会話を盗み聞くとは、どこまで命知らずなのだろうか。

「まあ、全部は聞けなかったんだけどね。さ
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