つぐない
とあるβテスター、宣言する
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少しでも自身に危険を及ぼす可能性のあるものを徹底的に排除しようとする動きがよく見られる。
そんな日本人の、それもネットゲーマーという独特の価値観を持った集団の中においても尚、《黒の剣士》に対する周囲の反応が鈍いのは、あくまで『オレンジしか狙われない』という前提があったからだ。
その前提が崩れた時―――ましてや命がけのデスゲームを強制されている現状で、今まで無害だと思われていた《黒の剣士》がグリーンを襲ったという話が広まれば、掌を返したような騒ぎになることは想像に難しくない。
それは街の治安維持を目的としている《ユニオン》にとって一番避けたい事態であり、だからこそ、《黒の剣士》がグリーンのプレイヤーを襲おうとしたという情報は未だに伏せられたままなのだろう。団員同士での情報交換にも、細心の注意を払っていたに違いない。
……だというのに。この少年はあろうことか、趣味のゴシップ集め感覚で、そんな“機密情報”に首を突っ込んでしまったらしい。
「お前ときたら……。その情報収集にかける情熱だけは《鼠》といい勝負するよ、まったく……」
「まじで!? 俺って《鼠のアルゴ》とタメ張れるほどの情報通だったのか!? ってことは、俺って結構すごい奴なんじゃね!?」
「ある意味な。だからって喜んでんじゃねぇよバカ。この際はっきり言っておくが、お前の趣味はとても褒められたことじゃないんだからな」
「えー!?」
頬を膨らませてぶーぶーと抗議する少年を適当にあしらいながら、男は密かに思いを巡らせる。
少年には後できつくお灸を据えておくつもりなので、この話が彼の口から他のプレイヤー達の間に広まるということはないだろう。
ないだろうが―――しかし。
人の口に戸は立てられないと言うように、ここでこの少年を口止めしたとしても、いずれこの話はSAO中のプレイヤーの知るところとなるに違いない。
もちろん、《ユニオン》の各団員には厳重な緘口令が敷かれているのだろうが―――いくら代表者である騎士ディアベルがやり手の人物だといっても、組織の末端に至るまでを詳細に把握することは難しいだろう。
《ユニオン》ほど大勢の構成員を抱えた組織ともなれば、いつ誰が口を滑らせるかわからない。大規模な組織になればなるほど、緘口令が破られる可能性は高くなってしまうのだ。
そもそも、彼の剣士の目的は一体何なのだろうか。
とある情報紙では、《黒の剣士》の目的はPKそのものだが、《ユニオン》の管理体制が行き届いている現状では大っぴらに対人戦闘を行うことが出来ないため、PKKとしてオレンジを狙うことで大義名分を得たかったのだとしているが、それでは“隠れオレンジ”までもを襲う理由にはならない。
元オレンジだろうが何だろうが、カーソルがグリーンである以上は一般プレイヤーとして扱われ、むしろ彼らを
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