つぐない
とあるβテスター、宣言する
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たちの上を行くキリトを、これを機に蹴落としたいという意図も少なからず含まれていたことだろう。
その件については組織内でも意見が分かれており、元々ディアベルの思想に共感して入団した者や、上に立つことに興味を持たない者は前者の和解案を、対して、大規模ギルドの恩恵に与りたいという思惑を持って《ユニオン》に加入した者や、単純に強さを見出されて勧誘された者───他のプレイヤーのためではなく、自分の利益のためだけに《ユニオン》に加入した者は後者の排除案をそれぞれ支持し、違う意見を持った団員同士による衝突が度々繰り返されるようになった。
また、最初はディアベルを英雄視していたプレイヤーの中にも、攻略組トップクラスのギルドに身を置いているうちに『自分たちこそが最強で、特別だ』という慢心を抱くようになってしまい、後者に鞍替えする者も少なくはなかった。
そのため、現在《ユニオン》内部の団結力は非常に弱まっており、ディアベルを以ってしても組織内の意見を取りまとめることが難しい状況となっている。
リンドら古参幹部の持つ影響力は日に日に強まっており、組織の存続のためには彼らの意見に首を縦に振らざるを得ない───SAO最大規模を誇るギルドの実情は、僕たちが想像していた以上に複雑だった。いずれギルドが分化したとしても、何ら不思議ではないように思える。
けれど───どうにも腑に落ちない。
あのキバオウがそうであったように、リンド、シヴァタ、ヤマタ、ハフナーの4人もディアベルのことを相当に慕っていたはずだ。
そんな彼らがディアベルへの裏切りともいえる行為───レイドを危険に晒してまでラストアタックボーナスを強奪しようという考えに至るまでに、一体どんな経緯があったというのだろうか。
少なくとも、傍から見ている分には彼らの関係は良好であったように思うし、それまでのボス攻略でもこれといったトラブルはなかったはずだ。
であれば、何が彼らにそうさせたのだろうか。
元々ディアベルに不満を抱いていたというわけではない以上、彼らがそういう行動に出たのは何か理由があるはずだ。
だとすれば───その理由は?
誰かに唆されたのか? でも、一体誰が?
リンドたち古参幹部を唆し、《ユニオン》の内部に亀裂を入れたところで、誰が得をするというのだろうか……?
「ふざけんじゃねぇ!!」
──と。
頭の中を疑問符ばかりが駆け巡り、会議の内容から意識を逸らしつつあった僕の耳に、石造りのテーブルを力一杯叩く音と、慣れ親しんだ声による怒号が飛び込んだ。
見ればテーブルに両手を突いて立ち上がったクラインが、今にも泣き出しそうな顔で攻略組の面々を睨み付けていた。
「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 投獄だの排除だの言う前に、どうして誰もアイツの助けになってやろう
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