5部分:第五章
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己の前に来られた帝に対して跪く。今二人の絆が戻ったのだった。
教経はその帝を抱きかかえそのうえで義経に顔を向けて言うのだった。
「判官よ」
「うむ」
「まずはこのことに礼を言う」
帝との再会のことについてであった。
「この恩でこの場は引こう」
「そうしてくれるか」
「だが我等の決着はまだ着いてはいない」
だがこのことは言うのであった。
「また後日。手合わせを願いたい」
「わかった。それではな」
「その時まで。さらばだ」
こう言って彼に別れを告げ吉野を後にする。帝も彼と共に吉野から去られた。
残ったのは義経達だけになった。狐は騒ぎが終わったと見て義経に声をかけてきた。
「義経様」
「何だ?」
「私もこれで」
こう彼に対して言うのであった。
「お暇させて頂きます」
「そうか。そなたも去るのだな」
「両親も戻ってきましたので」
言いながらその懐に抱いている鼓をいとおしそうに見るのであった。
「私はこの大和の何処かで静かに暮らします」
「そうか。達者でな」
「それではこれで」
最後に義経達に一礼した。
「おさらばです。どうかお元気で」
「そなたもな」
彼等は笑顔で別れの言葉を交えさせた。狐は別れを告げると宙に浮かびそのまま飛び去っていく。最後に弧を描いて義経に一礼してそうして。そのまま彼の前から姿を消したのであった。義経達は満開の桜達の中で何時までも彼が消えた空を見上げていた。回りに花霞が漂うその中で。
狐忠信 〜義経千本桜より〜 完
2009・6・27
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