五十五話:絶望
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には弱点と呼べる属性が存在しない。さらに彼は非常に勤勉だ。
以前の相手に対して圧倒的な力の差で勝ったとしても、鍛錬を怠ることはしない。彼は簡単に言えば努力する天才なのである。それに対して、凡人がいくら努力しようと勝てるわけがない。同じ天才であっても最初に差が開いていては追いつけない。クルスニク一族二千年の歴史に終止符を打つために産み落とされたかのような最後にして最強の戦士。
それが―――“ルドガー・ウィル・クルスニク”なのである。
「さて、覚悟して貰おう」
冷たい目と共に送られてきた声から感じた感情は一つ―――恐怖。リアス達は自然にその恐怖から逃れるために一纏まりになってしまった。それが下策だとも気づかずに。
ヴィクトルは二丁拳銃に持ち替え、それを何故か天高く放り投げる。それにつられて、一瞬イッセーが銃を見上げた瞬間その腹部に再びハンマーに持ち替えたヴィクトルの攻撃が突き刺さる。その余りの衝撃に悲鳴を上げながら大きく後ろへと吹き飛ばされるイッセー。
だが、まだヴィクトルの攻撃は終わることはない。今度は双剣へと武器を代え、突き進みながらイッセーの体を一太刀、そして後ろに回り込んで相手をすり抜ける様にもう一太刀と容赦なく切り裂く。そして、最後に先程、天高く放り投げておいた二丁拳銃を器用にキャッチして変則的な軌道の無数の赤い弾丸をリアス達全員に止めとばかりに撃ち込む。
「貫け! 祓砕斬・零氷!」
弾丸がリアス達の周りで爆発を起こし凄まじい爆音と共に真っ赤な炎が燃え上がる。リアス達は為すすべなくその炎に飲まれ地に倒れ伏してしまう。その様子をヴィクトルは何の感慨もなしにしばらく見つめていたかと思うと黙ったまま倒れているイッセーの元へと歩いていき胸ぐらをつかんで吊し上げ無機質な目で話しかける。
「赤龍帝。一つ君に提案がある」
「…て…提案?」
「君が今ここで自害するなら他の者は見逃してやろう」
その提案に息をのむグレモリー眷属達。そして、提案を投げかけられた張本人であるイッセーは目を見開きながらその言葉の意味を考える。ヴィクトルは己の選択が見たいのだと。
彼が自分達を見逃す理由なんて特には無い上に、自分ですら生殺与奪の権利をその手の平に握っているにも関わらずにわざわざ、自害などという手間のかかる手段を要求するのはそれしか考えられない。そして、彼は動かない体を懸命に動かして自分を不安げに見つめる仲間達を見る。その顔を見てイッセーは直ぐに心を決めた。
「……分かった―――」
「ダメよ! イッセー!!」
リアスの悲鳴が彼の耳に木霊する。だが、それに対して彼は僅かに笑って見せる。部長、人の話は最後まで聞くものですよ、と思いながら。
「―――な
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