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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二八話 一線
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は高いが、拒絶反応という爆弾を背負うことになる。
10年、20年と見た時の命の保証はない―――


「無論、衛士としての道を諦めるのならその右腕と肺を通常通り移植し、リハビリに努めればいいだろう――戦うだけが兵士の能ではないよ、私もお前を失いたくはない。」
「忠亮さん……」

唯依が気遣うように寄り添う。崇継の言葉は重い、重すぎる。
今まで積み重ねてきた技量・経験・理論を元に一人でも多くの兵が生き延びられるように、
一人でも多くの人間を守るために戦う戦場を変えることは出来る。

それでも、それでも―――己は、俺は…………不意に、左腕に触れる温もりがあった。

「忠亮さん、私は……唯依は忠亮さんがどんな道を歩もうとも受け入れます。―――だから、己の心のままに。」
「唯依……ああ、分かったよ。お前が背を押してくれるのならこれ程心強いことはない。」

唯依が己の残された左掌に自分の手を重ねていた。
男というのは何処までもガキな生き物なのだ。好いた相手に良い恰好をしたがる悪癖がある。

何より、惚れた女が支えてくれるといっているのだ―――無様を曝せるわけがない。
そして、己は死ぬまで戦士で居たい。

「分かった。欧州(ヨーロッパ)に行こう。」
「了承した……念のためだ、遺書はしたためておけ。」

斑鳩崇継は釘をさす―――それは後悔しないための助言だった。







無機質、そう形容するしかない基地の私室。
何故だろう、今まであったのなら温度に関係なく冷たさを感じるだけの部屋だが、唯依が寝泊まりするようになってから一気に温かみを帯びたような気がする。

―――自分以外の誰かが傍にいるというのが此処を安らげる場所としているのかもしれない。
恐らく、唯依が居なくなってしまえばこの部屋は凍てつく洞窟と大差ない空間となってしまうのだろう。

……そんな愚にもつかない思案にシャワーのくぐもった耳鳴りのような水音を聞きながらふける。

やがて、それも止む。


「……忠亮さん、お湯いただきました。」
「ああ、もう少ししたら己ももらうとするよ。」

シャワー室の戸が開かれ、バスローブに身を包んだ唯依が出てくる。
しっとりと濡れた髪に上気した肌が艶めかしい……元から魅力的ではあったが最近、色気が出てきたように見える。


「……遺書、書いているのですか?」
「ああ……親兄弟、友人には前のをそのまま使い回しているがな―――」

白いバスローブの胸元を抑えながらソファーに座り机に向かう己の横からのぞき込む唯依。
過去幾つかの大規模作戦、そして再生医療のための手術。どれも死の危険があった為、遺書を(したた)めていた。
だが、唯依に向けたものだけは新しく書き上げなくてはならな
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