暁 〜小説投稿サイト〜
幸せは消えて
4部分:第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第四章

「ただのバードです」
「バードか。誤魔化されんぞ」
「じゃあ酒場で歌っていた歌は何だ」
「ただの流行歌です」
 バードは困り果てた顔で答えていた。
「本当にただの」
「ふん、嘘は何とでも言える」
「その通りだ」
 だが兵士達は彼のその釈明を全く聞き入れようとはしなかった。それどころかその手に持っている槍の棒のところで彼を何度も叩きだしたのである。
「ひいっ」
「我が国を害する者は許さん」
「誰であろうとな」
 バードを何度も打ち血が滲んでからもなおも打ちながらそれで言うのだった。
「わかったら来い」
「取調べでゆっくりと聞いてやる」
 こう言ってバードを引き立てていくのであった。周りの黄色い星の者達はその有様を冷ややかに見ている。そうして口々に言うのだった。
「我が国を害そうとするんだ」
「さっさと罰を受けろ」
 バードが無実である可能性は全く考えていなかった。しかもその言葉は極めて冷酷なものだ。烏達はそんな彼等を見てまた囁くのだった。
「これはかなり」
「酷いね」
 こう囁き合うのである。
「見たところあの詩人さんは悪い人じゃないよ」
「ただの旅のバードだね」
「そうは見えないんだろうね」
 若者もまたここで彼等に対して囁くのであった。
「ここの人達にはね」
「そうなんですか。やっぱり」
「それにしても何かここの人達って」
 彼等はあらためてその黄色い星の者達を見る。見れば見る程冷たく温かさのない目をしている。それはまるで氷のようであった。
「凄く冷たいですよね」
「こんな目をした人達ってはじめて見ますよ」
「その人達に見られてるんだよ、僕等は」
 若者は烏達にこう告げたのだった。
「わかるね。それは」
「はい。だから」
「注意しましょう、本当に」
 彼等はより一掃警戒することにした。そのうえで国の中を見て回る。国の建物はどれもかなり立派なもので黄色い服の者達の身なりもかなりいい。馬車も馬も何もかもが見事なものであり兵士達もその数がかなり多いうえに鎧も剣もいいものばかりであった。そうしたものを見ていくとこの国がかなり豊かなのがわかるのだった。
「商店街に品物は多いし」
「種類も数も。それに質も」
「うん、凄いね」
 彼等は今商店街を歩いていた。確かに品揃えも質もいい。それに行き交う人々もかなり多くそこからもこの国の豊かさがわかるのだった。
「豊かさはね」
「商売も上手くいっていますし」
「作物の質もいいですし」
「豊かなのは豊かだね」
 若者も使い魔達もこのことは強く感じ取ることができたのだった。
「けれどね」
「けれど。ええ」
「そうですね」
 しかしであった。彼等はこの国に対してあまりいい感情を持てなかった。先程のバードの件にしろ門のこと
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ