暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第十七話〜夜明け〜
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逆に安心感を覚え始めていく。それが更なる不快感をライに覚えさせ、焦燥を加速させる。

(ナハトヴァールが僕に拘った?ただの迎撃システムが何故?!)

 思考は疑問と共に即時撤退を吐き出し続けている。しかし先程から振りほどこうとするも、既に深くまで潜り込まれている為か左腕がピクリとも動かない。
 思考と本能が撤退の為に警鐘を鳴らし続ける中、一つの離脱の手段を思いつく。躊躇は一瞬。ライは自由な右腕にMVS形態の蒼月を呼び出すと迷いなくその刃を振るった。

「あああああああああああああああああああああ!」

 自身の肩口近くを迷いなく切り捨てる。
 そして、吸収されていく左腕を気にかけることなく、ライはエナジーウイングのから刃状の魔力を飛ばしながら、急速離脱する。
 離脱の為に長時間の射出は出来なかったが、それでも数十にも及ぶ魔力の刃はナハトヴァールの人型を捉えた。そして障壁のないむき出しの状態でそれを防ぐ手立てをナハトヴァールは持ち合わせてはいない。
 数十の刃が人型の身体に群がり刺し貫く。

「――――――――」

 痛みを感じているのか、それとも取り込んだライの肉体の一部を取り込んだことに対する歓喜か、人型は口を開け人には理解のできない咆哮を上げる。

「ッ――――!」

 そんな中、ライは確かに見た。
 刃が引き裂いた人型の胸の内側。そこにシャマルに蒐集された際に見た、自身のリンカーコアと酷似した球体を。

「座標データの転送を――――」

『既に送信済みです!それよりも離脱を!!』

 警告ではなく既に懇願するような声に応じるようにして、ライは即座に自身が開けた障壁の穴を潜る。障壁からでると、先程まで感じていたナハトヴァールの生物としての熱を感じなくなり、どこか清々しさを感じた。

「『アクセルドライブ』」

 ライの声とデバイスの機械音声が重なる。
 突撃した時と同じように景色が自身の後方に流れていく。しかし、今回はその時とは違った。
 治療はしていても血液の補充はされていなかった為、失血がライの意識を奪いにかかる。

「ッ」

 ギチリと唇を噛み切り、なんとか意識を繋げようとするが、既に痛みは身体全体で感じられ、今更気付けの役には立たなかった。

「―――――あ」

 高度が下がり始める。眼下には先の攻防で使用された氷結魔法によって生み出された氷の大地が広がっている。

『『マスター!!』』

 声が聞こえる。それが最後の活力となった。
 身体を捻り、背中から墜落する。横滑りしながら冷たい大地を削っていく。既に自身がどうなっているのかすら認識できずにライは目を閉ざしていく。
 最後に視界に差し込んだのは、三色の光であった。




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