四話:約束と出会い
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し始めたのだ。
その仕草に疑問を覚えて自身も木の上の部分を見てみると一匹の白猫が木の枝の先っぽの方で落ちないように必死で枝にしがみついているのが見えた。そこで、彼はあの猫が降りられなくなったのを見て少女がどうにかしようとしているのだと納得する。彼は人が居ないかを確認しているらしき少女に後ろから声を掛ける。
「あの猫を降ろしてあげたいのかな?」
「わあっ! あ…ご、ごめんなさい。急に叫んだりして」
「いや、急に話しかけた私が悪かった。それで……どうなのかな?」
自分が黒い服に黒い仮面という全身黒づくめの怪しい人間に見えることは自覚しているので、少女になるべく不安を与えないように優しげな笑みを浮かべながら再度問いかける。少女はヴィクトルのそんな様子に安心したのかホッと息を吐きながら説明を始める。
「何だか、あの子降りられないみたいだからどうにかしたくて……」
「なるほど……少し、荷物を見ていてもらえないだろうか?」
「え? は、はい」
ヴィクトルは少女から事情を聞くと荷物を地面に置き、木を登り始める。子供に対しては危ないからやってはいけないと言いたい彼だが、あの必死で、枝にすがりつく猫を放っておくわけにもいかないので悪いお手本になるかもしれないが見捨てるという選択は出来ない。
何より、彼は、以前はルルという名の白猫を飼っていたので、同じように自分で登ったはいいが降りられなくなったという状況には慣れているのでそんな猫の救出はお手の物なのだ。彼はスルスルと木を登っていき、猫を片手で捕獲してそのまま抱きかかえるとゆっくりと降りて行った。
別に彼なら飛び降りても掠り傷一つ負う事などないのだが、それをやって下で待っている少女が自分も飛び降りても大丈夫だと勘違いして真似をして怪我をしてしまうかもしれないと思ったので少し時間のかかる方を選んだのである。
「もう、これで大丈夫だ」
「ありがとうございます」
「礼には及ばないさ」
そう言って、ヴィクトルが猫を離すと猫は先程まで降りられなくなっていた事など忘れたかのようにさっさと歩き去って行ってしまう。そんな実に気まぐれな猫らしい様子に安心したのか少女が自分にお礼を言って来たのでこの子の飼い猫ではないのだろうなと考えながら気にするなと返す。
「それにしても、簡単に木に登るなんて凄いですね。私、運動神経が悪くて……にゃははは」
「危ないから余り真似はして欲しくはないのだが……。それとだ、自分を卑下しなくていい。苦手なことがあるのは別に恥ずかしいことではない。苦手なことがあるのなら別のもので補えばいい。それに出来ないことは無理に自分でやろうとせずに他人に頼ればいい」
若干、尊敬の眼差しで見られたこと
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