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羅生門の怪
羅生門の怪
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とであろう。今更何を言うか」
「しかしだな」
「しかしもこうしたもないわ。さっさとかかって来ぬか」
「だからわかったと申しておろう」
「そんなでかい図体をして何を言うか。さあ来い」
「うぬぬ」
「来ぬのならこちらから行くぞ」
 そう言って巨人の片脚を身体全体で掴んだ。
「むんっ」
 身体に力を入れる。そしてそのまま持ち上げた。
「うわっ」
 巨人は思ったより軽かった。易々と持ち上がる。平太夫はそれを頭の上にまで持ち上げるとそのまま前へ思い切り放り投げてしまった。
「えいやっ」
「うわっ」
 それで終わりであった。巨人は地面に思い切り投げ飛ばされてしまった。
「何じゃ、思ったより軟弱だろう」
 平太夫は投げ飛ばされてしまった巨人を見て大声で笑い飛ばした。
「その程度か?おまけに軽いし」
「痛たたたたたたたた・・・・・・」
「さあ来い。化け物退治は侍の務めじゃ。容赦はせぬぞ」
「あ、あの・・・・・・」
 平太夫がまた一歩前に出ると大男は顔を上げて弱々しい声を出してきた。
「むっ、何じゃ」
「御勘弁を」
「何、勘弁とな」
「御許し下さい。悪気はなかったのです」
「悪気はなかったとな」
「はい。私はそもそも大男でもないですし」
 そう言うと大男の姿がすうっと消えた。そしてそこから一匹の狐が姿を現わした。
「狐じゃったのか」
「はい」
 狐は弱々しい声で応えながらぺこりと頭を下げた。
「からかっただけなんです」
「つまりほんの悪戯であったというわけじゃな」
「はい」
 狐はそれを認めた。
「では近頃のここでの化け物というのはお主の仕業だったのだな」
「その通りです」
 そしてそれも認めた。
「全て私がやりました。人が驚くのが楽しくて」
「狐らしいといえばらしいがのう。じゃが人に迷惑をかけるのはどうなのじゃ」
「申し訳ありません」
 狐は恐縮しっぱなしであった。
「人を驚かせるのを楽しむのが私共の楽しみですから」
「それもどうかと思うがのう」
 平太夫は何か説教臭くなっているのを感じていた。だがそれでも言わずにはいられなかった。何処か子供を叱る時のような感じになっているのがわかった。
「確かにお主達や狸といった連中は悪戯をよくする」
「はい」
「だがそれでは何時までも進歩がないのではないか」
「といいますと」
「御稲荷様は知っておるな」
「それはまあ」
 狐の神である。正一位という高い位まで持っている。言わずと知れた有名な神様である。
「御稲荷様が人をからかうか?」
「滅相もない」
 狐は首を慌てて横に振ってそれを否定した。あまりもの速さに顔が幾つにも見
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