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羅生門の怪
羅生門の怪
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進む。そして遂に羅生門に着いた。門は開けられたままであり人の気配一つなかった。暗闇の中に巨大な楼門がそびえ立っているだけであった。
「肝試しにも何にもならんかったのう」
 平太夫は馬から降りて楼門を見上げてそう言った。結局何もなかったことに拍子抜けさえしていた。そして短冊に近付いていった。
 短冊を手に取った。これで終わりだと思った。だがそうはいかなかった。
「さて行くか」
「待て」
 行こうとしたところで彼を呼び止める声がした。
「誰じゃ?」
「化け物じゃ」
 声はそう語った。
「何、化け物」
 平太夫はそれを聞いて喜びの声をあげた。
「それはまことか」
「如何にも」
 声は胸を張ってそう答えた。声で、であるが。
「わしはこの羅生門をねぐらとする化け物じゃ」
「ふむ」
「わかったらさっさと立ち去るがいい」
「面白いことを言う」
「何?」
 平太夫はその化け物の声を聞いてその大きな口を開けて笑った。
「どうやら化け物というものは洒落がわかるらしい」
「何をふざけておる」
「ふざける?わしは本気じゃぞ」
 彼は不敵に笑ってそう答えた。
「嘘はつかぬ。決してな」
「ではここで何をするつもりじゃ」
「知れたこと。この短冊を持って行かせてもらう」
 彼は臆することなくそう答えた。
「元々その為にここに貼っておいたのじゃからな」
「戯れ言を」
「じゃからわしは戯れ言なぞ言わぬ」
「では短冊を持って行くのだな」
「それが決まりだからな。許されよ」
「許さぬと言ったら?」
「その時は仕方が無い」
 平太夫はどっしりとした声でそう述べた。
「相手をしてもらおうか。生憎これを持って帰らなければならないのでな」
「わかった」
 すると藪の方から何かがぬっと姿を現わしてきた。
「むっ」
 見れば雲をつくような大男であった。鎧に身を包んだ巨大な侍であった。
「相手をしてやる。かかって来い」
「望むところ」
「何と」
 にやりと笑って前に出て来た平太夫を見て大男はかえって面食らってしまったようであった。顔はよくは見えないがその声は驚いたものであった。
「お主、正気か」
「正気でなければ何なのだ」
 平太夫は不敵に笑い、上を見上げたままそう答えた。やはりその顔は暗がりの為見えはしない。
「答えてもらおうか」
「ううむ」
 どうもかえって困っているようであった。巨人は弱った声を漏らした。
「お主の勇気はよくわかった」
「何と」
「その勇気に免じてこの場は許してやろう」
「馬鹿なことを申すな」
 だが平太夫はその言葉も笑い飛ばしてしまった。
「そちらから言ってきたこ
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