羅生門の怪
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が再び集まった。庭に篝火を置きそこに集まっていた。
篝火の周りには虫達も集まっていた。そしてぶんぶんと飛び回っている。時々平太夫達の周りに来ると手で追い払う。いい加減鬱陶しくなってきたところで平太夫が声をかけてきた。
「皆おるな」
「うむ」
同僚達は憮然として答えた。
「ならばよい。ではまずはくじを引くか」
「それで行く順番を決めるのだな」
「そうじゃ。さあ皆の衆それぞれ引いてくれ」
「わかった」
平太夫の周りに集まると皆彼が差し出したくじをそれぞれ引いた。そしてそれで順番を決めた。平太夫は最後となってしまった。
「何じゃ、わしが最後か」
「それでも別に構わぬだろう?」
「まあのう。では早速はじめるか」
「うむ」
「では行って来るわ」
まずは最初の一人がそう言って馬に乗って出発する。だがすぐに帰って来た。
「どうしたのじゃ?」
「うむ、ちょっとな」
青い顔をして答える。だがそれ以上は言わない。おおよそのことは見当がついているが皆それを聞こうとはしなかった。これは思いやりからであった。それに自分もそうするかもしれないと思ったからである。
それは当たった。二人目も三人目も引き返した。四人目も五人目も。皆すぐに引き返してくる。こうして程無く平太夫の番となったのであった。
「もうわしの番か」
「行くのか?」
「当然じゃ。行かぬわけにもいくまい」
彼はニヤリと笑ってそう述べた。
「ではな」
「おう、行って来い」
同僚達に見送られ馬に乗って屋敷を出る。そしてそのまま道に出た。
「ふうむ」
夜の都は暗闇に覆われていた。うっすらと家々が見える他は何も見えない。だがその中で牛車がたまに見えたりする。どうやら貴族が逢引に行っているらしい。
「夜といえばそれもまた楽しみだのう」
平太夫はそれを見てにんまりと笑った。彼も女色は嫌いではない。むしろかなり好きな方だ。それを嗜むのもまた豪傑の条件であると考えていた。
妻もいれば子供もいる。だが妻は一人であった。もっと欲しいとは思っていても財産がなかった。だから仕方なく橋の下に行くこともあった。そこで思う存分豪を見せ付けるのである。それが彼のやり方であった。
その牛車も一台か二台程である。殆どない。平太夫と馬はその何もない夜道を進んでいった。そしてやがて朱雀大路に出た。
左右に家々が並ぶ他は何もない。犬や猫が時折見える位である。しかしその犬や猫達も彼を見るとすぐに姿を消す。そして暗闇の中に虫が飛ぶ音がするだけであった。
「本当に何もないのう」
彼はその夜道を見てそう呟いた。
「怖くとも何ともないわ」
彼にとっては夜道なぞ何でもなかった。別段気にするわけでもなく先を
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