羅生門の怪
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御主等それでも侍か」
平太夫はそれを聞いておおいに憤慨した。
「若し何かがいれば成敗する。それでよいではないか」
「だがのう」
それでも他の者達は渋っていた。
「鬼だったらどうするのじゃ」
「退治するまでじゃ。鬼を倒したとあれば誉れじゃ」
「幽霊だったらどうするのじゃ」
「退けるまで」
平太夫はそれでも平気な顔をしていた。鬼も幽霊も恐れてはいないようであった。
「それが侍ではないか。何をチマチマと言っておるか」
「では御主は羅生門へ行く勇気があるのか?」
「無論」
彼はそう言い切った。
「肝試しに丁度いいではないか。よし、いいことを思いついたぞ」
「何じゃ」
「どうせよからぬことであろう」
皆杯を止めてそう彼に対して言った。
「一人ずつここから羅生門に行くのじゃ。一人でな」
「一人」
「おう、そうでなければ肝試しの意味がなかろう」
平太夫はその大きな口を開けて笑いながらそう言った。本当に大きな口であった。拳がそのまま入るのではないかとさえ思える程であった。
「まさか断るわけではあるまい。侍たるものな」
「ああわかったわかった」
同僚達はプライドも刺激され止むを得ないといった様子でそう答えた。
「ではやろう。それでいいのじゃな」
「うむ」
「どうせ断ってもやるだろうしな。では何時やるのじゃ?」
「今すぐというわけにはいくまい」
「それはな」
それは流石に無理であった。彼等は酒が入っているし準備もある。今すぐにしようとは平太夫も言いはしなかった。
「明日でどうじゃ」
「明日か」
「これならいいじゃろう。どうじゃ」
「そうじゃのう」
同僚達はそれぞれ考え込んだ。めいめい顎に手を当てたり腕を組んだりして考えに入った。そしてそれぞれ述べた。
「まあよかろう」
「明日じゃな。馬を使って行くのじゃな」
「そうだのう」
馬という言葉を聞いてあらためて考える。彼等が今いる屋敷から羅生門まではわりかし距離があった。朱雀大路に入れば一直線であるがそれでもかなりの距離があった。
「馬はよかろう。その方が早いしな」
「よし」
「では明日。拒むでないぞ」
「わかっておるわ」
「御主一人でもやるというに決まっておるからな。こうなったら乗りかかった舟じゃ」
「目印に朝のうちに門のとことに短冊をかけておこう。それを持って帰れれば合格じゃ。よいな」
「うむ」
こうして侍達は肝試しに真夜中の羅生門に行くことになった。だが楽しみにしているのは平太夫だけで他の者は憮然としていた。皆乗り気ではなかったのである。
だが時間は止まることがない。すぐに次の日のその夜になった。屋敷に平太夫と同僚達
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