鎧武外伝 斬月編
不枯なる果実の守り女
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手剣を振り被って踏み出した。
すると碧沙が庇うように光実の前に出て両手を広げた。
「朱月さん」
振り下ろされた片手剣が、止まった。
「やっぱりそうなんですね」
『どうして……』
「わたし、鼻はけっこう利くほうなんです。あなたからは朱月さんの香りがしました。だから、朱月さんかなって」
イドゥンは片手剣を引いた。
「朱月さん。どうしてこんなことを」
『あなたはあなたたち兄妹の父親が裏で何をしていたか知ってますか?』
イドゥンは滔々と語った。
――かつて沢芽市の郊外に、児童養護施設があった。
呉島天樹が慈善事業として設立した孤児院というのが表向きの姿。しかし裏では、ユグドラシルという組織の将来の指導者、研究者、工作員などの人材育成を目的としていた。
そして「不適格」の烙印を押されたコドモたちは――
「人体、実験……」
光実が呆然としたように呟いた。
『あなたたちのお父様もヘルヘイム感染してたんですよ。ヘルヘイム感染から逃れようとして、私の同類を使った実験はより過酷に、非道になっていきました。でも間に合わなかった。因果応報だわ』
碧沙の中に父との思い出は無いに等しい。
それでも天樹は碧沙の父親だった。
実の父が藤果たちをそのような目に遭わせていた。自分が助かるためだけに。
兄たちには「特別な者としての責務を果たせ」と教えてきた父が、誰よりもその責務から遠い行いをしていた。
「目的は復讐ですか。父が死んでも止まらないということは、あなたは」
『ええ、そうですよ。だってユグドラシルは残っている。まだ呉島天樹の血を引くあなたたち、それに……呉島貴虎が、生きている。私の復讐は終わってない』
碧沙は、倒れてしまいたい弱さを懸命に抑え、口を開いた。
「いいえ。終わってないのは復讐じゃありません」
訝しむイドゥンを、まっすぐ見上げた。
「あなたの中の悲しみです」
『ッ!!』
どれくらい見つめ合っていたのか。
光実が碧沙の肩を掴んで自分の後ろに隠した。
「僕は妹みたいに説得なんてしませんよ。僕が世界で一番許せないことはね、僕の兄妹と仲間を傷つけられることなんです。僕だけならともかく、あなたは妹まで傷つけようとした」
光実が取り出したのは、戦極ドライバーとブドウのロックシード。光実はブドウの錠前を開錠した。
「変身」
《 ブドウアームズ 龍・砲・ハッハッハッ 》
紫翠の甲冑が光実を鎧い、龍玄へと変えた。
龍玄は碧沙に下がるように告げ、ブドウ龍砲をイドゥンに向けた。
『……あの人の背中に隠れて
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