鎧武外伝 斬月編
妹目線の危険信号
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りだった。
厳格だった。父・天樹についての認識はその程度だった。
物心つく前に天樹は海外に(藤果と共に)渡った。以来、手紙や電話の類いはなかった。
物心ついていなかった碧沙にとっての「家族」は貴虎と光実だけ。
それでも足りない隙間は咲たちダンススクールの仲間が埋めてくれた。
(父親が死んだって聞いてこんなにヘイキでいられるわたし、きっと悪い子)
使用人に夕食の時間だと呼びに来られたため、碧沙は思案を断ち切って食堂へ向かった。
その日の夕食は藤果が作った。
食事の世話をするために食堂にいる藤果からは、相変わらずあの甘ったるい香りがしたが、碧沙も度重なるヘルヘイム関係の騒動で耐性がついてきていた。態度には出さずにすんだ、と思いたい。
「ずいぶんと腕を上げたな」
「さすがにあの頃とは違いますので」
(貴兄さんのこんなにリラックスしたとこ、はじめて見たかも)
光実を見やると、光実も同じことを思っているのだと、目の色で分かった。
「確かに。あの時のアップルパイは本当に酷かった。だが、あの頃の私にとって、何よりのご馳走だった」
貴虎が、笑った。
呆然とした、と言っていい。
(わたしや光兄さんの前じゃなくても、貴兄さん、こんな顔するんだ。貴兄さん、きっと、このひとを)
なんだか泣きたい気持ちになって、それ以上は食が進まなかった。
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