After12 光に焦がれたカラス A
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その子が「来てほしいとこ」は海浜通りだった。
アベックやらペットの散歩やらジョギングに勤しむ人やらで、通りは賑わっている。
「どうしてこんなとこに?」
光実が尋ねても、その子は答えなかった。
「アーマードライダー龍玄」
その子はおもむろに学生鞄を放り捨てた。
「この沢芽市の正義の味方なのよね。呉島くんは」
「……そんな重苦しいものじゃないよ。僕のはただのヒーローごっこだ」
去って行った紘汰のようになりたくて、がむしゃらに戦っただけ。
「ごっこでもヒーローなら、目の前にバケモノが現れたら、殺してくれるわよね」
「あのさ。さっきから何を」
体ごとふり返ったその子が――変貌した。
黒い羽根。黒い体毛。黒いくちばし。どう見ても、カラスをモチーフにした怪人だった。
「オーバーマインド……!?」
光実はとっさに距離を取り、学生鞄から戦極ドライバーとブドウの錠前を取り出した。
『そウヨ。ワケの分かラナイ果物なんカ食ベて、バケモノにナッて、地球かラ連れ去らレタ。なりタくテなッタわケジャないノニ。ヒドイ、ヨ』
カラスインベスが片翼を揮った。ソニックブームが生じ、通りにいた人々がカマイタチに遭ったように裂傷を負った。
のどかだった公園に悲鳴が満ちる。
光実はブドウの錠前を開錠し、装着した戦極ドライバーにセットし、カットした。
「変身」
《 ブドウアームズ 龍・砲・ハッハッハッ 》
紫翠の中華鎧が光実を覆い、龍玄へと変身させた。
と、同時に、カラスインベスは空へ舞い上がり、飛んで行った。
『くそっ――待て!』
龍玄はカラスインベスを見失うまいと、何度も空と正面を見ながら、カラスインベスを追跡した。
やがてカラスインベスが降り立ったのは、海に面した、立入禁止の鉄柵に囲まれた一画だった。
龍玄は鉄柵をジャンプして乗り越え、カラスインベスに向けてブドウ龍砲を、撃った。
カラスインベスは――避けなかった。
むしろ両腕を広げ、自ら銃撃を浴びた。
『どうして……』
『……1年の頃、まだわたシ、自分の背ノ高サがコンプレックス、だッタ。男子よリも高クて、からかワレテばっかデ。勝手ナ期待、されテばっカデ。でも一人だけ、「カッコイイ」って言ッテくれタ人がいた。アなタヨ、呉島クん』
龍玄は混乱した。光実としての学生生活でそんな記憶はない。あるいは、あったとしても忘れてしまっていた。
『呉島くんガ、あそこでカッコイイなんテ、言ってクレタ、カら。嬉しカッタ。高い背が気ニならナくなった。呉島くんハ、ワタシの恩人なノ。だカら、こんな体二なっタ時、呉島くんに殺サレたイ、思ッて、帰っテキた』
カラ
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