After3 土を泳ぐ殺人魚 @
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城乃内秀保は、ラッピングされた一輪の白菊を持って、噴水公園に着いた。
公園は遊び回る小さな子どもたちと、木陰のベンチで噂話に忙しい母親たちで賑わっている。城乃内の存在は、この場ではさぞ浮いて見えるだろう。
だが、お構いなしに階段を下り、公園の人工水流の前まで行った。
――初瀬はここで死んだのだと、咲から聞いた。
表面的には、初瀬亮二は行方不明者として扱われている。他でもない城乃内が、行方不明者の掲示板に初瀬の写真付き情報提供の紙を貼った。
彼の墓はどこにもない。墓参りに行こうと思えば、彼の最期だったというこの場所しか思いつかなかった。
コウガネとの決戦の前、城乃内は呉島貴虎に真相を聞かされた。
“初瀬亮二はインベスになって、ユグドラシルに処分された”
城乃内はこっそりマツボックリのロックシードを取り出した。
城乃内自身の戦極ドライバーとドングリのロックシードは、かつての戦いで戒斗に破壊されてしまったから、手元にあるロックシードはこれだけだ。
(何も知らない人からすれば、初瀬ちゃんってほんっとバカな奴とか思われるんだろうな。でもね。俺は、黒影の名前も格好も、初瀬ちゃんが一番似合ってたと思うよ。なんて、お前が言えた義理じゃねえだろ! とか言われそうだな。うわー、すっげえ簡単に想像ついた)
城乃内は人工水流の傍らに白菊を捧げてすぐに立ち上がり、噴水公園を後にした。
帰ったら行方不明者の掲示板から、初瀬の情報募集の紙を剥がそうと決めて。
ささやかな献花の帰り道で城乃内は、集団で下校するセーラー服や学ランの生徒を何度も見た。
この近くで何か事件があったか。城乃内は昨日チェックしたネットニュースを思い出し、思い当たった。
(そういやこの地区だっけ。若い女の子ばっか狙ってるっていう本土の連続殺人犯の目撃情報があったっての。あー、だから集団下校)
「あれ、城乃内くんだ」
下からした声は聞き覚えのあるものだった。
「咲ちゃんじゃん」
去年から伸びていない身長の低さのせいで、セーラー服が似合わないことこの上ない。
「今日はシャルモンのお仕事ないの?」
「そう、シフトない日。そういう咲ちゃんこそ、友達とか一緒じゃないの?」
「さっきまでは同じ地区の子たちと帰ってたよ。うちの方向こっちだから、別れたけど」
「ふーん。あ、じゃあ俺が家まで送ろうか。どうせ俺も帰るだけだったし」
「わあ、ありがとうっ」
ふと思う。成人男性の自分とセーラー服の咲が並んで歩いて、むしろ城乃内が通報されやしないか、と。
しかし、まあ、と思い直した。それはそれで、シャルモンの従業員だと説明すればこの上ない身分証明になるだろうから、構い
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