暁 〜小説投稿サイト〜
秋葉原総合警備
都外のアニメフェス No.9
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「ほら、危ないことはやめよう。千夏ちゃん。」
 やっと千夏の足が動いたが、踵はソファに当たり、早くも動きが止まってしまった。恐怖しかなくなり、逃げることは頭に無くなっている。この追い詰める状況を楽しんでいるのか、男はゆっくり近づき、さらには不気味な笑みを浮かべている。
「さっさと…出てけよ!!」
 美咲がまた立ち上がり、千夏がやっとぶつけたパイプ椅子を拾っては、隙を突いて振り下ろした。か弱い千夏とは威力が違う。頑丈な男でも、向こうのロッカーまで突っ込んでいった。
「美咲さん!…あ、血が…。」
「大丈夫…。あたし、怪我する任務多いから。千夏さんは先に逃げて。もうすぐ陽一が来るはずだから。」
 恐怖に怯えようとも、命の恩人を見捨てることはできなかった。事務所から出ようとしない。しかし、美咲は振り絞った勇気を受け取る訳にはいかなかった。少々怒鳴りながら、ここを出るように言い渡す。
「仕事だから、気にしないで。」
 当然、それは理不尽だと思う。あまりに危険だと思う。しかし、美咲のその言葉は千夏の表情を変えた。小さく頷き、小走りで事務所のドアを開けて去って行った。美咲も表情は変わる。激しく、静かながらも荒れていた頃の顔になる。男も起き上っていた。
「喧嘩好きなのかな…?悪い子だな。」


「おい、もっと急げねぇのか!」
「ここら全員、フェスティバルの客です…。こんな所で渋滞になるとは…。」
 やっと東京に入ったというのに、思わぬ渋滞。高速道路で捕まれば絶望的だった。タクシーですら捕まっている大通りで陽一はドアを道路に飛び出た。
「親父さん、先に俺が行きます!警察集めといてくれませんか。」
「気ぃ付けていけよ!」
 先ほどから、美咲への電話が繋がらない。千夏も電話に出ない。明らかに何かがあっただろうと慌てた表情が見てわかる。大通りは通らず、頭の地図を頼りに裏路地をすり抜けていった。緊張感が故のざわつきから、一気に喋れないほどの静まりに。
「陽一…、頼むぞ。こう見えて俺は年だ…。美咲は一人娘なんだ…。」


 女も捨てる勢いで始末してやろうと、死に物狂いで男に当たりに行くが、次第に危機に陥っている。
「ほらほらどうした?…そろそろ諦めたらどうなんだい!?」
 男も容赦がない。殴りつけるどころか女子相手に周りの道具にぶつけていく。
「…!!…ああぁ!」
 段々と闘志が折れていき、振り回される一方に。髪を掴まれ無理矢理立たされた。
「はぁ…、はぁ…。げほっ!」
「あんまり、こういうことはしたくなかったよ…。」
 手放し、美咲を仰向けに転がした。美咲の目が虚ろになっている。高い位置から見下ろし、美咲の姿を眺めている。今までで一番の最高の笑みのようだ。存分に楽しんだところで、男は最悪の行動に。
「はぁ、はぁ……っ!!!」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ