6部分:第六章
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はわしが脳や生き肝を喰ろうておるのを知っているな」
「はい」
晃は答えた。
「だからここまで来ました」
「そうか、では覚悟はよいな」
住職の身体から赤紫の気が放たれたように見えた。朧で、それでいて夕闇の中に蠢くそれはまさに妖気であった。人にあらざる者達だけが放つことのできる気、晃も今それを見た。
「まずいぜ、御主人」
クロが彼に言った。
「このままじゃあんたやられちまうぜ」
「けれどどうしたら」
「さっきの花火はまだあるかい?」
「花火?」
「最初に投げてたあの小さい玉でもいい。あるか?」
「残念だけれどないよ」
晃は答えた。
「そうか、じゃあ打つ手はなしだ」
クロの言葉は諦めたのか素っ気無いものであった。
「皆このまま住職さんにやられちまうぜ」
「困ったな、そりゃ」
「折角ここまでやったってのによ」
動物達はそれを聞いて残念そうに呟く。
「こんなことならさっさと倉庫にあった蜂蜜食っておくんだったぜ」
そこで狸が言った。
「おい、こんな時まで蜂蜜かよ」
それを聞いて狐が元々尖っていた口をさらに尖らす。
「そんなのだから太るんだろ」
「そういう御前だって油揚げには目がないだろ」
狸もムッとして言葉を返す。
「ったくよお。お互い様じゃねえか」
「お互い様だったらその蜂蜜山分けしな」
「食うのかよ」
「俺だって蜂蜜は好きなんだよ。いいだろ」
「あの住職さんから生き残れたらな」
「ヘッ、生き残れたら蜂の巣も紹介してやるよ」
「それ何処にあるんだよ」
「裏山によ、あるぜ。でっかいのがよ」
「裏山・・・・・・蜂蜜」
それを傍目で聞いていた晃の心にまたあることが閃いた。
「それだ、それだよ」
「どうしたんだよ、一体」
「逃げても間に合いそうにないぜ」
「違うって。住職さんをどうにかする方法を見つけたんだよ」
晃は明るい声でクロと烏に返した。
「誰でもいい、倉庫からその蜂蜜を持って来て」
「あ、ああ」
動物達のうち何匹かが晃の言うままに倉庫に向かった。そして蜂蜜が入った壺を持って来た。
「持って来たぜ」
「これをどうするんだ?」
「最後のお楽しみってわけじゃないだろう?」
「そんな筈はないさ」
晃はその壺を受け取って会心の笑みを浮かべていた。
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