ターン23 鉄砲水と太陽神(前)
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「どーこだー!」
少しでも犯人の気を引くべく、あえて派手に音を立てながら走り回る。チャクチャルさんは完全にしゃべる力を失う一瞬前、確かに自分の衰弱はラーの翼神竜のしわざだと言った。だけど、ここで一つ疑問が生じる。去年は何ともなかったのにここにきて急にラーのカードが世界のどこかからいつぞやの三幻魔みたいにカードの、それもチャクチャルさんほどの力を持ったモンスターの力を吸い取るようになるというのはいくらなんでもおかしな話だ、ということだ。
つまり、何か裏がある。あまりといえばあまりのタイミングの良さから一時は斎王が何か企んでいるのかとも思ったけど、三幻神をどうこうできるほどの力を斎王が持っているのならいつまでもこのアカデミアに執着する理由がまるでわからない。だから何か、もっと別の理由が絡んでいるのだろう。そう考える方が自然だ。そしてその理由というのが、このジェネックスに繋がっているとしたら?いや、別に鮫島校長を疑うわけじゃない。ただ、この大会には世界中のプロが集まってくる。伝説のカードがやってくるには、もってこいの場所といえるだろう。つまり、ラーはこの島に来ているのかも。その考えを裏付けるように、タイミングよく校長の声が島中に仕掛けられたメガホンから放送された。
『ジェネックス全参加者に告ぐ。大会を一時中断し、全員に外出禁止を命ず。繰り返す、大会を一時中断し、全員に外出禁止を………』
タイミングからいって十中八九これだ。むしろ違ったらどうしようってレベルだ。
「ビーンゴ、っと。悪いね校長センセ、外出禁止は聞けそうにないわ。うちの大事な神様ここまで弱らせてくれてんだ、キッチリ落とし前だけはつけてもらわないとね」
『……!!』
「ん?どしたのうさぎちゃん……おっと、センキュ!」
パタパタと飛び跳ねながら真剣な顔で僕の学生服の裾を引っ張る幽鬼うさぎ。彼女が指差す方向の先には、何かを話している十代と、あれって誰だろうか。ここからだと後ろ姿しか見えないけど、なんだかどこかで見たことある人な気がする。だけど、今そっちは重要じゃない。彼女が指差していたのは、その二人に近づく黒い影の方。いかにもさえない研究員、といった風体だが、なぜか見ているだけで人を不安にさせる嫌な気配を持っている。こっそり彼らから十数メートルの距離まで近寄ってみると、ちょうどその男が二人に話しかけるところだった。
「……これは、ミスター……」
む、うまく聞こえないな。さすがにこれだけ離れてれば当たり前か、もうちょっと近寄るとしよう。ついでに回り込んで、あの研究員の背後を取れる位置に移動する。うまいこと誰にも気づかれずに絶好の位置を取り、再び耳を澄ます。
「……そのカードを返すのデース」
「返してほしければ、この『ラーの翼神竜』の入ったデッキに
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