第144話 暗殺
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「あ暖かい」
燕璃は独白すると、彼女は眠たそうな表情で正宗の治療を黙って受けていた。
――数十分後。
燕璃の左腹の傷は正宗の治療で治っていた。燕璃は狐に化かされたような表情で仕切りに左腹を触っていた。
「正宗様、何をなさったんです」
「気で治したのだ」
燕璃は正宗の言葉に驚いていた。数十分で折れた骨が修復するなどありえない。彼女が驚くのも当然だった。
「正宗様、真逆と思いますが『五斗米道』と縁をお持ちなのですか?」
「ない」
「では、その力はどこで手に入れられたのです?」
燕璃は正宗の両肩に掴みかかり顔を近づけて聞いてきた。
「幼少の頃から自然に使っていた。誰かに教えてもらった訳ではない」
「まことですか!?」
燕璃は「信じられない」という表情で正宗のことを見つめていた。
「お前がどう思おうと私は生まれながらにこの力を持っていたのだ」
正宗は面倒臭そうに燕璃の体を退けた。
「俄かに信じられませんがとりあえず正宗様の言葉信じます」
「『とりあえず』とは何だ。『とりあえず』とは。私は何も嘘は言っていないぞ」
「信じていないとは言ってはいません。あまりのことに驚いているだけです」
「ところで一つ聞いていいか?」
「何でしょう?」
「荊州で弓の名手と言えば誰だ? 長距離からでも正確に的を射抜く技量を持ち速射のできる人物だけに限る」
正宗の言葉に燕璃は真剣な表情で黙考した。
「直ぐに思いつくのは黄漢升です」
「黄漢升?」
正宗の表情は一瞬曇った。黄漢升といえば黄忠のことである。正宗は神妙な表情で考え込む。正宗は原作の知識がある。もし、原作通りなら黄忠には一人娘の璃々がいる。正宗への復讐に燃える蔡瑁が璃々を人質に取り無理矢理に命令したとも考えられる。
「黄漢升は確か荊州牧に仕えていたはずです」
「それは本当か?」
「本当です。前荊州刺史亡き後、後任である現在の荊州牧に仕えています」
正宗は考え込む。
「甘興覇の可能性はないか?」
正宗は徐に燕璃に言った。史実・演義共に甘寧は弓の名手だ。弓で人を殺しまくっている。正宗の中では彼女の華麗なる弓による殺害歴が頭の中に浮かんでいた。正宗と燕璃が手合わせをするために城を出ることも甘寧は知っている。「蔡瑁に唆され甘寧が自分を殺そうとしたのではないか」と想像していた。だが、甘寧が暗殺を行い、それが露見すれば間違いなく孫家は破滅だ。甘寧が脳筋であったとしてもあまり愚かな行為。とても甘寧が自ら進んで実行するとも思えない。だが正宗の中で甘寧への疑心がくすぶっていた。
「興覇が何で正宗様を狙わないといけないのです。それに、興覇の獲物は曲刀じゃな
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