第144話 暗殺
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か? もしや劉表の手によるものか? いや劉表にこんな大それた真似はできない。ではやはり蔡瑁か?
正宗は険しい表情で鏃を睨んでいた。燕璃は正宗の様子に驚愕しているようだった。常人なら即死の攻撃を受けて平然としているのだから当然の態度といえる。
「毒矢か」
正宗はぼそりと呟くと自分を狙った矢が飛んできた方角を凝視した。その方角にはここに来た時のままの深い森が広がっている。気を探知できる正宗に気取られずに矢を放つにはかなりの距離を取る必要がある。それは弓の使い手がかなりの腕前ということだ。正宗は険しい表情で再度森の奥を睨みつけた。しかし、再び矢は飛んでくることはなかった。
暗殺者は去ったと察したのか正宗は燕璃に近づく。
「正宗様、大丈夫なのですか!?」
燕璃は平然としている正宗の様子に動揺している様子だった。
「大丈夫だ。それより左腹を見せてみろ。治療してやる」
正宗は燕璃に答えると彼女の左腹を見せるように促した。
「これしきのこと大丈夫です。それより正宗様は直ぐにこの場を去られてください」
燕璃は痛みに表情を歪めながらも正宗に逃げるように進言した。
「元々暗殺が目的であったのだろう。でなければ遠方からの弓による攻撃など面倒なことはせん」
正宗は燕璃に淡々と言った。その言葉に燕璃は表情を変え弓が飛んできた方角を見た。
「この辺りには人の気配はない。だから伏兵はいない。私が人の放つ気を感じ取ることができることは知っているな。長弓による射程限界からの射撃と見ていい。私が警備の厳重な城から出たのをこれ幸いと見てしかけたのだろう。暗殺に失敗した以上、この場に長居はせんだろう。それよりさっさと治療するぞ。治療しづらいから地面に寝転べ」
正宗は燕璃に寝転ぶように促すと燕璃は素直に従った。燕璃は横になろうとする時、左腹の痛みからか苦しそうな表情を浮かべていたので正宗が支えて寝させた。
燕璃は正宗から治療してもらうことが気になるのかしきりに正宗と左腹を見ていた。
「あの正宗様」
「燕璃、悪いが左腹を見せてもらうぞ」
「えっ!?」
正宗はそう言うと燕璃の服をはだけさせた。燕璃は胸にサラシを巻いていたのでハプニングに成らなかったが、彼女は恥ずかしそうに正宗から視線を逸らした。正宗は燕璃の態度に興味がないのか、真剣な表情で彼女の左腹を凝視した後に軽く触れた。
「ぐっ」
燕璃は正宗に左腹に触れられると苦悶の表情を浮かべくぐもった声を上げた。
「手加減したつもりなだったのだがな。肋骨を何本かやられている。悪い悪い。だが、この程度なら問題ない」
正宗は独白しつつ飄々と詫びを言いつつ右手を燕璃の左腹に当てた。すると正宗の左手が黄金色のように輝き始めた
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