第144話 暗殺
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た。
「燕璃、巨槍に殺気が籠っているぞ」
「正宗様が悪いのです。それに正宗様を殺せるとは思ってはおりません」
燕璃は言い終わると同時にそれは起こった。
燕璃は正宗との間合いを詰めることなく巨槍を突き立ててきた。正宗の目には巨槍がどういう訳か回転しているように見えた。この間合いでは巨槍が自分に届くことはないと彼は高を括っていた。しかし、彼の背筋に寒気を感じた。咄嗟に彼は間合いを取るために後方に下がった。すると、正宗が先ほどまで立っていた場所に人一人が入る位の穴が空いていた。深さは平均的な大人の腰位の深さはある。正宗は表情を引きつらせた。
「外しましたか」
燕璃は大きな溜息をつくと巨槍で体を支えるように立ち、残念そうに独白した。
「これがお前の奥の手か?」
「ええ。外しましたけどね」
燕璃は残念そうに言った。
「その巨槍で照準を定め相手に気を放つ。お前も気を操れるのか?」
正宗は燕璃を驚愕した表情で見つめていた。彼はこれまで気を扱う人物と出会っていない。そのため気を操れる人間の絶対数は少ないと考えたのだろう。
「故郷の徐州に居た折に」
燕璃は辛そうに答えると巨槍で体を支えながら片膝を着いた。彼女の息遣いから本当につらそうなことが伺い知れた。
正宗は燕璃の容体が気になり駆け寄ろうとした。
その時、どこからともなく十数本の矢が空から降ってきた。矢は三四本ずつ正宗達に到達し一定の時間差で放たれてきたようだった。
正宗は矢を全て薙ぎはらうと燕璃を庇うように前面に出て矢が飛んできた先を厳しい表情睨みつけ凝視した。彼の視線の先には深い森が広がっている。正宗は森の奥を探るように目を凝らした。
「何者だ! この私を清河王と知っての狼藉か!」
正宗は矢が放たれた森に向かって怒声を上げた。しかし、彼の言葉に反応する者はいなかった。険しい表情を浮かべた正宗は森に向かって歩き始めた。正宗は周囲の気配を探らんと気を張り巡らす。
「正宗様っ!」
燕璃が叫ぶ声が後方から聞こえる同時に正宗の首を横に射抜ぬかんと一本の高速の矢が正宗を直撃した。
その矢は正宗の命を狩りとるどころか傷一つつけることができなかった。正宗が肉体に気を張り巡らすことで皮膚は鋼鉄並みの硬度に変化していたためだ。
正宗は矢の衝撃を受けた首筋を右手でさすると、その掌を凝視した。次に視線を地面に移し自分の命を狙ったであろう矢を無造作に掴み取ると鏃の部分を凝視し臭いを嗅いだ。
――鏃の表面にどす黒い何かを塗っている。鉄の臭い以外に気になる臭いはしない。毒!? 蔡瑁か? 蔡瑁やってくれるではないか。しかし、前方と左方向複数人の弓兵達による犯行か。あれだけの正確な弓の手練れを暗殺に使うなど考えられるだろう
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