第144話 暗殺
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り得た。泉が正宗の心情を表す様に渋い表情を浮かべた。
――翌日。
正宗は早朝に燕璃の元を訪ねると、泉に用意させた駿馬二頭で目的である小高い丘に向かった。泉も当初は正宗に同行しようとしていたが昼餉の店の手配を任されていたこともあり泣く泣く同行を諦めた。
現在、正宗は馬上より小高い丘の下に広がる風景を堪能していた。その隣には同じく馬に乗る燕璃が控える。
周囲には朝露に濡れた草々が陽光を浴び輝いていた。
開けた丘の背後には深い森が広がり巨木が雄々しく鎮座し美しい緑色を映えさせている。
「良い眺めだな」
「見渡す限りに畑と田が広がっています。今年も豊作でしょう。美羽様は立派に太守を勤められています」
燕璃は畏まった口調で正宗に言った。
「『美羽様』か。ここには二人だけしかいない。普段通り『美羽嬢ちゃん』でも構わないぞ」
正宗は燕璃に言い丘の上からの田園風景をしみじみと眺めていた。
「よく治めているようだな。燕璃、この場所を手合わせの場に選んだのは、この風景を私に見せたかったからか?」
燕璃は笑みを浮かべ頷いた。
「美羽は良き為政者となったようだな。安心して華南を任せることができそうだ」
「華南ですか。世の中が乱れる時勢とはいえ。私は聞かなかったことにいたします」
燕璃は口角を上げ笑みを浮かべ言った。
「いずれ分かることだ。私に仕える以上覚悟はしておけ」
「分かっております」
燕璃は正宗の背中を見ながら笑みを浮かべた。
「雑談はこれ位でいいだろう。燕璃、手合わせ頼むぞ」
「はい」
二人は馬から降り、各々の獲物を手に距離を取った。正宗は双天戟、燕璃の体躯に相応しい大ぶりの巨槍だった。
二人は二十尺(約六メートル)の間合いを取り向かい合った。
「まじまじとみると大した獲物だな」
正宗は燕璃の朱塗りの巨槍を上から下までまじまじと眺めながら言った。
「正宗様のほうこそ業物とお見受けいたします」
正宗と燕璃は言葉を交わすと沈黙した。相手の隙を探そうとする両者の張り詰めた空気が一帯に漂う。あたりは虫の声すら聞こえない程に静寂を保っていた。
数十分の睨み合いの末に最初に動いたのは正宗だった。
「甘いっ!」
燕璃は隙を作った正宗に対して叫びと渾身の一撃を正宗に叩き込んだ。
「?」
燕璃の一撃は正宗を捉えることはできなかった。正宗は体躯を左にずらし、闘気を込めた槍を縦にし巨槍の突撃の軌道をずらした。そのまま彼は燕璃の懐に潜り込まんと間合いを詰めようする。
燕璃は槍を片手で軽々と操る正宗の膂力と正宗の動きに驚愕するが、彼女は間合いを詰めてくる正宗から距離を取ろうと後方に下がろうとし
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