彼らの平穏、彼らの想い
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も思っている……が、彼らはいつでも繰り返す。詠も月も始めは止めていた。しかし彼らがその程度で止まるかと言われれば、否。
つまり、彼らはガキなのだ。それでいいと思っているし、斜に構えてバカを出来ないような人間になどなりたくないだけの。
「で、でも……」
「いいの。あいつらだっていつも通りにしたいんだから、そういう時は放っといてあげましょ」
連れられるままに、後ろの遠くで怒声が聴こえた。振り返れば、目に映るのは男の背中が幾多。やはりやんややんやと盛り上がっていた。
彼女達が離れた場所を遠目に見ながら、カレーの大鍋の前で苦笑を零しているモノがいる。
「あいつらやっぱバカばっかりだな」
「人のこと言えんのかよ? ゆっくり飲まずに気ぃばっかり遣ってる奴がよ」
「ん? だってお前ら肉ばっかりよそるだろが」
「そりゃ早いもん勝ちだから仕方ねぇってもんだ。食うの遅ぇ奴が悪い。早くおかわりくれよ、徐公明」
「ったく……おらよ。野菜マシマシじゃがいも大盛りだ。ちなみに肉無しな」
「うげっ! ふざけんなこの野郎!」
鍋の横には机を置いて、彼は皆におかわりを配りながら兵士達と話をするだけ。
「意地悪したらダメですよ? えと、えと……お、お皿を出してください」
「おおっ、さっすが我らが軍師様!」
ひょい、と彼の隣で小さな少女がお玉を扱い、肉だけ綺麗に取りよそった。
褒められてたじたじと身を捩る雛里は、白い割烹着姿で彼の意地悪を止める。うひょーっと歓喜の声を上げてその兵士は自分が話していた場所へと駆け出した。
「案外楽しそうじゃないか」
「彼らにとっての日常は黒麒麟が居なくとも回るモノになっています。それは全て、彼がこういった場を繰り返し繰り返し積み上げて来たからに他なりません」
「何度も何度も、飽きる事無くこうして絆を繋いで来たってわけだ」
「毎日のお食事ですらこんな感じでした。あの人は……私達よりも兵士達と過ごしたがる人でしたから……」
遠い目をして雛里が語る。
桃香の成長を待つ為に、と彼は将とすら深く関わらなかった。それも理由の一つ。
しかし重鎮達と絆を繋ぐことは大切なのだが、黒麒麟の遣り方は成り上がりモノ故の変わらない方法。
こと戦場に於いてモノを言うのは兵士との絆なのだからと、自然と肩を並べて戦うモノ達と過ごすことを選び、一つの組織を纏める上で一番重要な部分を強めた。
普通の将は、上に行けばいくほど練兵の時くらいしか兵士と関わらない。街や外での仕事に連れて行った兵士くらいとしか絡みもしない。
仲良きことは素晴らしきかな、将同士の絆が強ければ連携も出来よう。他の部隊に任せもするし、信頼も置ける。
だが彼が選んだ戦術は一部隊特化型の特異なモノ。たった一つの部隊だ
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