2部分:第二章
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第二章
「そして赤子を抱く様に言ってくるのです」
「詳しいな。見たのか」
「はい、私もこの目で見ました」
長老は朔太郎に対してこうも話した。
「実際にです」
「それでその女はどういった姿をしているのだ?」
「はい、黒く長い乱れた髪をしておりまして」
長老はまず髪から話した。
「そして顔はです」
「顔は」
「夜の中で蒼ざめておりまるで死んだ者の様です」
「死んだ様にか」
「そして白い服を着ており脚のところが赤く濡れています」
「赤く。ふむ」
朔太郎はそれを聞いてその太い眉をぴくりと動かした。見れば眉だけでなく目も口もだ。全てが大きく武骨なものである。そうした顔であった。
「面妖な姿をしているのだな」
「そして赤子を持っています」
長老はこのことも話した。
「そうした姿をしております」
「そしてその赤子を抱けばだな」
「次第に重くなりそれに潰され殺さえてしまいます」
信長と同じことを話していた。まさに全く同じであった。
そしてだ。長老はまた述べるのだった。
「そういう次第で。今大垣は夜な夜なその女に怯えている次第です」
「それを終わらせる為にわしが遣わされた」
朔太郎は長老が怯えた様子なのを見てこう告げた。
「そういうことだ」
「それではすぐにですか」
「そうじゃ。それが普通の女ならばよい」
言いはしたが自分でそれはないと思っていた。
「しかしあやかしならばじゃ」
「倒して下さいますか」
「そうさせてもらう。それではじゃ」
「はい、夜にです」
長老はまたこのことも話した。
「夜に御願いします」
「わかっている。では昼はじゃ」
「どうされますか?」
「その川辺を見ることにしよう」
少し考える目になっての言葉だった。
「今からな」
「えっ、川辺をですか」
長老はそれを聞いてだ。驚きを隠せなかった。
「そこに行かれるのですか」
「駄目か?それは」
「危ないのでは、それは」
それを聞いてだ。長老はそれを止めようとする。
「何が出て来るかわかりません」
「いや、夜にしか出ないのであろう」
だが朔太郎はそのことを言うのだった。
「そうだな」
「はい、それは」
それはその通りだった。長老もそれは認めて頷いた。
「その通りです」
「では問題ない。今からだ」
「行かれるのですか」
「戦場を見て知っておくことは勝ちへの第一歩だ」
武者らしい言葉であった。彼はこれまでの多くの戦でそれをわかっていたのだ。伊達に今まで生きてきたわけではない。それもあった。
「ではな。今から行く」
「では私も」
長老もここで言ってきたのだった。
「御一緒させてもらいます」
「いいのか?恐ろしいのではないのか?」
「お武家様だけを行かせるわけ
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