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小僧の豆腐
3部分:第三章
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らんかったんや」
「すぐに身体洗ったからな」
 それで大丈夫だったというのである。
「ことなきを得たわ」
「それが不幸中の幸いやったな」
「ほんまや。まあとにかくや」
 ここでほっとした顔になった佐川だった。
「もうあの小僧に会っても豆腐は食わんで」
「絶対にやな」
「ああ、もうあの豆腐は食わん」
 また言う彼だった。
「懲りたわ、ほんま」
「タチの悪い悪戯やな」
 安倍川は少し楽しげに笑いながらこんなことを述べた。
「そんな豆腐出して来るなんてな」
「そやな。妖怪ってそうやねんな」
「ああ、まあ人を食うような妖怪やなくてそれは何よりやないか」
「それもそうか。命があってこう話せるだけでもええことやな」 
 そのことは素直に喜ぶ佐川だった。彼は笑いながらカレーを食べていた。外の雨は次第に止んできて晴れようとしていた。梅雨の大阪の少し度が過ぎた悪戯であった。


小僧の豆腐   完


                  2010・4・30

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