2部分:第二章
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第二章
「美味そうな豆腐やけれどな」
「おいらのお店の残りなんや」
小僧はこう言うのだった。
「よかったら食べてや。美味いで」
「いたんでたりとかはないやろな」
一応念の為にそれを聞くのだった。
「毒とかな。まさか思うけれど」
「毒入れたのなんか食わせたら人殺しになるやろが」
小僧の方からそれは否定してきた。
「そやからそれはないわ」
「ないか」
「そや、それはないわ」
こう言うのだった。
「そんなのしたら一発で鬼太郎が来るわい」
「鬼太郎?」
小僧が出した名前にいぶかしむ顔になる。店の裏手のすすけた通りは夜ということを差し引いてもうらびれたものだった。ゴミ箱がありその周りでは野良猫達が集まって寝ている。鼠もあちこちに見える。しかし人はいない。そんな場所だ。
そうした場所で小僧と話してだ。今その名前を聞いたのである。
それで問うたのだ。その名前のことをだ。
「誰やそれ。変わった名前やな」
「又三郎の親戚やと思ってくれたらええわ」
「又三郎?ああ、あれか」
佐川にもそれが誰なのかはわかった。
「風の又三郎かいな。あの童話の」
「ええ奴やで」
小僧は何故かその又三郎を知っているようだった。
「まあ東北やから滅多に会えへんけれどな」
「そうなんか」
「まあわしは悪いことはせんで」
小僧はあらためてこう言ってきた。
「それは安心してや」
「安心してええんやな」
「そやから悪いことしたら鬼太郎に懲らしめられるんや」
またこの名前を出すのである。
「それにわしもそんなことは好かん。だからせんから」
「そうなんか」
「そや。そやからこの豆腐安心して食べや」
こう言うのであった。
「美味しいで。それもごっつうな」
「ごっつうか」
「人のそれとは作り方がちゃうから」
何気に気になる言葉を出している。しかし佐川は小僧の今の言葉には気付かなかった。そしてそのまま話を聞くのであった。気付かないままである。
「そやから食べてや」
「ああ、わかったで」
ここで遂に頷いた彼だった。そうしてだ。
今も差し出しているその豆腐の皿を手に取った。小僧はすかさず箸を出してきた。思ったよりも気が利く小僧だった。そしてそれを食べるのだった。
その豆腐は確かに美味かった。まろやかでありしかも味がしっかりしている。小僧の言葉通り彼がこれまでに食べたこともない美味い豆腐だった。
満足できた。見事な味である。佐川はそれを食べ終えてそうして言うのだった。
「美味かったわ」
「そやろ、美味かったやろ」
「ああ、こんな美味い豆腐はそうはないわ」
満足しきった顔での言葉である。
「ほんまにな」
「また何処かで会ったらその時も食べてや」
小僧はそんな彼に対してにこにこと
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