三話:疑問
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ままの現実を受け入れたからだと気づき。自分には無理だろうなと彼女は悟ったように目を閉じる。同時になぜ前と言ったのかとも疑問に思うが知った所で意味の無い物だと判断して何も言わないことに決めた。
「大切な者を取り戻すのを諦めた理由だが……それを言う前に、あなたに頼みたいことがある」
「何かしら? 無理な物は無理と言わせてもらうわよ」
「そんなに難しい物ではない。ただ、私にフェイトとアルフの手伝いをさせて欲しいのだ」
その言葉にプレシアは目を見開く。何かしらの交換条件を求められるかと思えば、こちらの仕事を手伝わせて欲しいと明らかにこちらに有利な条件を無償で突き付けて来たのだ。深く考えない人間であれば疑いもせずに受け入れるかもしれないがプレシアは聡い女性だ。只より安い物はない。そのことを良く知っているために疑いの眼差しを隠すこともなくヴィクトルに問いただす。
「何が目的?」
「目的などという大したものではない。子供を守るのは大人の役目……それだけのことだ」
裏も何もなく答えた彼の言葉にプレシアは、自分が少しばかり惨めに思えて来た。フェイトを創り出した自分より、余程親のようではないかと思わされ、何故か無性に腹が立ってしまったので投げ槍気味に彼の申し出を了承する。
「いいわ、勝手にしなさい。内容は後であの二人に伝える様に言っておくわ」
「感謝するよ。それでは、理由を話すとしよう……理由としては―――娘に私の願いを拒絶されたからだ」
「…っ! そう……どうして拒絶されたのか聞いてもいいかしら」
「至極簡単な理由だ。愛する娘を偽物扱いし、挙句の果てには『思い出なんて、またつくればいい』などという馬鹿な言葉を投げかけたからだ」
懺悔するようにヴィクトルの口から吐かれた言葉にプレシアは動揺を隠せなかった。考えたことがないわけではない。彼が生き返らせようとしている娘、アリシア自身に自分がやっていることを否定されることを。それでも、娘に失った幸せを得て欲しいという願いから彼女は止まることはしなかった。
その結果がフェイトという人形の完成だ。アリシアの偽物として生み出し、挙句の果てには代わり等いくらでも作れるとばかりにアリシアの記憶を植え付けてしまった物。果たして、彼女が、それはアリシアではないと気づけたことは幸運だったのか、不運だったのかは誰にもわからない。
「例え生まれ変われても、その先に居るのは……私の娘ではなかったというのにな」
「生まれ変わるですって? そんなことどうやって成し遂げるつもりだったのかしら」
「どんな願いも一つだけ叶えてくれる場所……『カナンの地』。私はその場所を目指した、娘の愛情すら利用してな……」
深く、深く、懺悔
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