三話:疑問
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てどうしても同じような境遇の人間に聞いてみたいという気持ちが抑えきれなくなったのだ。
「……あなたと私はよく似ている。あなたも大切な者を全て失い絶望したのだろう?」
「あら……その根拠がどこにあるのかしら」
「隠しても無駄だ。私はあなたと同じ目を何度も鏡の前で見て来た。世界のすべてに希望を見出せなくなり、過去にすがるしか出来なくなった、生きながらにして死んでいる人間の目をな」
そう言って、ヴィクトルはプレシアの目を覗き込む。宝石のように美しい瞳ではあるがそこには宝石を輝かせるべき光が一切見受けられない。これは空虚なガラス玉という方が正しいかもしれない。その目に映されているものは在りし日の思い出だけだ。
その事に彼はかつての自分を思い出して悲しげに左目を揺らめかせる。そんな彼の目は彼女を苛立たせた。まるで、自分の行く末を知って悲しんでいるように見えて、自分が必ず失敗すると言われているような気分になって。
「御託はいいから、早く私の質問に答えてくれないかしら?」
「あなたに残された時間が少ないのは分かるが、人の話はそう急かすものではないさ」
「っ! どうして、それを!?」
「言ったはずだ。あなたと同じ目を私は何度も鏡の前で見て来たと」
苛立ちを隠そうともせずにプレシアは彼を急かしたが、自分が病魔に侵されて先が長くないことを言い当てられて、その表情に焦りを見せ、反射的に魔法を使おうとするがその手は彼に優しく抑えられてしまう。そして、その行動とは似つかないドスの利いた声で宣告される。
そのことに彼女らしからぬ表情で呆気にとられて彼を見つめると彼は彼女の手を抑えている手とは別の方の手で仮面を取り外し、その顔を彼女に見せつける。彼女はその顔を見て息をのむ。元々は端正な顔立ちであったのだろうと伺える顔のエメラルド色の目を持つ左半分は特筆するべきことではない。
しかし、その右半分はもはや人間の顔だとは思えなかった。本来白いはずの肌はどす黒く染まり、右目の黒目の部分は血のような赤色で白目は黒く染まっていた。一言でいえば化け物とも言える顔である。彼女はその人間とは思えない顔つきに声が出ずに金縛りにあったように見つめる事しか出来ない。
「これは私が一族に伝わる力を酷使したための代償だ。これのせいで私の寿命は半分以上が削られてしまってね。故に私も前はあなたと同じように焦っていた」
「………血を吐いたりは?」
「前は毎日のように吐いていたさ」
「そう……本当に似ているわね」
ヴィクトルの言葉に溜息を吐く様に呟くプレシア。こうも、置かれた状況が似ているにも関わらずになぜ、ヴィクトルの方は憑き物が落ちたような顔をしていられるのだろうと思うが、すぐにそれは彼がありの
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