三話:疑問
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いく。
「あなたがプレシア・テスタロッサで間違いないかな?」
「……そうよ、私がプレシア」
「ヴィクトルだ。この度の、ご招待感謝するよ」
ヴィクトルは軽く礼をして、緩やかにウェーブの掛かった長い黒髪に前面を大胆に開いたバイオレットのドレスと、肩に羽織る黒いマントでは隠しきれぬ柔らかな曲線を描く豊艶なスタイルに、左目を覆う髪では隠しきれぬ知的さを醸し出す色白の美貌を持つ女性、プレシア・テスタロッサを見る。
普段ならば目を見張るような美女なのだろう。だが、今の彼女の顔は青白くとても健康そうには見えない。なにより、化粧で隠してはいるが以前の彼の顔にも浮かんでいた死相が見て取れるのだ。もう、長くはないだろうなと彼は内心で顔をしかめる。
一方のプレシアの方も目の前に立つ男を注意深く観察していた。相手の出方を探るために放った自身の牽制の一撃を事もなげに避けたどころか、それを咎める事すらしない落ち着きがプレシアにとてつもない不気味さを感じさせた。
この男はひょっとすると弱り切った自分では手も足も出せない人物なのではないかという弱気な考えが一瞬彼女の頭をよぎるがそれをすぐに振り払う。自分はただ、体が弱くなって気も弱くなってしまっただけだと言い聞かせて、出来るだけ余裕のある声で問いかける。
「どうして、フェイトの元にいるのかしら?」
「行くあてがないのと、助けられた恩を少しでも返す為だ。……だが、あなたが本当に聞きたいことはそんな事ではないだろう?」
少したりとも言いよどむことなく答えられた予想通りの返事にプレシアが反応するのを待つこともなくヴィクトルは全てを見透かすような瞳で逆に問いただす。その瞳に彼女は不快感と同時に、理解者が居るという少しばかりの喜びを感じる。彼女は余りにも長い間、孤独な生活を送っていた。その為に対等に話すという事自体かなり久しぶりだったが故にそう感じたのである。だからこそ、彼女は戸惑うことなく本当に聞きたいことを彼に問うた。
「どうして、あなたは諦められているのかしら?」
仮面の下に隠れて見えないが少し苛立ちの籠った自分の言葉に彼がハッキリと眉をひそめているのが彼女には雰囲気で分かった。何を諦められているのかを彼女は言ってはいないが目の前の男が、自分が何を言いたいかを理解できない程愚かとは到底思えなかった。
今まで傀儡兵を使ってそれとなく男の様子を観察していたがフェイトとアルフに関わっている時はまさに父親のような優しい顔を見せるが一人でいる時は冷たい無表情でいることを彼女は知っていた。
そして、一度だけではあるが間違いなく傀儡兵を鋭い眼光で射抜いていた出来事があったのをしっかりと覚えている。それ以来、彼を危険視してきたのだがフェイトとの会話を聞い
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