三話:疑問
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壊れてしまったのだ。彼の居た分史世界という存在は、時歪の因子と呼ばれる核を壊されると共に消滅する仕組みなのだ。彼の世界の時歪の因子は何を隠そう、彼自身だったのである。
その為にこうして彼は生きてはいるものの彼の世界は本物の“ルドガー”の骸殻によって間違いなく壊されてしまっただろう。だからこそ、彼は帰りたいとは思わないし、帰りたくとも帰ることは出来ないのだ。
「ご…ごめんなさい。……辛いこと聞いて」
「……ごめんよ」
「気にすることは無い。以前は認められずに取り戻したいと足掻いていたが……現実を今は受け入れられている」
彼の言葉を目の前の二人は変わらずに悲しげな表情で聞いていたが、二人を監視するために施した魔法からその言葉を聞いたある女性は動揺が隠せなかった。自分が決して認められずに足掻いている物事を諦めるのではなく受け入れていると話す男にどうしても感情が押し殺せなかった。一度胸に渦巻いた不快な感情は収まること無く、女性の心を乱した。そして、女性はある決断をして、フェイトに連絡を入れる。
「……え? お母さん。……ご、ごめんなさい。それで、何か―――え?」
フェイトは驚きで目を丸くしながら、ヴィクトルの顔を見つめた。それに対して何かあったのかと尋ねる様に見つめ返すと、フェイトが戸惑いながら何があったのかを伝えて来た。
「お母さんが…ヴィクトルさんに会ってみたいって…言ってる」
ヴィクトルはフェイトの母親に会うためにフェイトとアルフに連れられて『時の庭園』と呼ばれる次元間航行も可能な移動庭園にいた。元は明るい空間であったのかもしれないが今は主の心を映し出すかのように暗く重い雰囲気を漂わせている道を歩いていき、ある部屋の前で立ち止まる。フェイトの母親が二人には入るなと言っているので二人の案内はここまでだ。
「あの鬼ババァに殺されないように気をつけなよ」
ヴィクトルの身を心配したアルフがフェイトに気づかれないようにソッと耳打ちしてくる。ヴィクトルはそれに対して基本フェイトを中心にして動いているアルフがフェイトの慕う人物をこれ程までに毛嫌いしているということはフェイトの母親が娘であるフェイトに対して虐待にも近い厳しい態度をとっているのかもしれないと予想をたて、少しだけ悲しい気分になる。
「それでは、失礼するよ」
ヴィクトルが軽くノックをしてから部屋に入る。すると、それと同時に紫色の電撃が彼の顔目掛けて襲いかかってくる。だが、彼はそれに対してまるで分かっていたとでも言わんばかりに軽く頭を傾けるだけで回避する。そして、それを放ってきた人物の座った玉座のような椅子の元に何事もなかったかのように歩いて
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