epilogue
one day
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どうにも彼女は俺に対する対応と違って、彼女にはこのあたり問答無用の押しの強さがないのだ。まあ食事栄養睡眠全部完全管理される俺を「甘やかしている」とするのであれば、牡丹さんは彼女には厳しいとも言えるかも知れない。その辺にどのようなやりとりがあったかは俺は知らされていない。
だが。
―――アタシはっ、牡丹さんと友達だもんねーっ!
―――ええ。友人なのです。
嬉しそうに満面の笑みで言う彼女と、無表情の中に僅かに目尻を緩ませた牡丹さん顔を見るに、それは決して悪いものではないのだろう。俺たちは三人とも、まあ、いわゆる「普通」とは違うわけだし、そのあたりは女同士の通じるものもあるのだろうし。
まあ、悪いものじゃない。
「やれやれ、っと!」
「シドっ! おっきろーっ、って、あーっ!」
「もう起きてるわ、アホ」
「えーっ! 寝起きのボディプレスはどうするのさーっ! 今日こそはと思ってたのにっ!」
「いい加減にそれは諦めろっ!」
「朝餉の用意は済んでいます」
「あーっ! それも私がーっ!」
この賑やかな日常は、悪くない。
悪くないくらいに、幸せなのだろう。
ふとした思考に涙腺が緩みかけて、慌ててあくびにごまかす。
―――悪くない、か。
「……いや、違うか」
「って、ううぅ? シド、どうしたの?」
「なに、ちょっとね」
―――最高に幸せだ、って、思ってさ。
その一言を飲み込んで、俺は寝床から立ち上がり、歩き出す。
勇者ではない。
英雄でもない。
ただのひとりの脇役の、けれども確かな「幸せな日常」ってやつを。
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