暁 〜小説投稿サイト〜
四条大橋の美女
5部分:第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後

第五章

 こうも言うのだった。
「神様になったのかい」
「英霊です」
「ははは、僕が英霊か」
 それを聞いてだ。思わず笑った高杉だった。
「そうなるとは思っていなかったよ」
「ですがなります。ただこうしたことをお伝えしてもそれをわかってくれる人は中々おられなくて」
「そういえば僕の前に君がここに連れて来た人もいたんだね」
「そうです。ですがわかってもらえずそしてです」
「そうした人はどうなったのかな」
「ここで見たことを忘れてもらいました」
 そうしたというのである。
「それがどうも神隠しということになったようで」
「噂というのは大きくなるものだからね」 
 高杉はその話を聞いてまた述べた。
「どうしてもそうなるね」
「そうです。それは不本意でした」
「仕方ないよ。けれど僕はわかったよ」
「わかってくれましたか」
「よくね。しかし」
 また笑う高杉だった。そしてこの言葉を出した。
「面白いね」
「面白いですか」
「うん、面白いよ」
 こう女に告げた。
「幕府は倒れてこうした世の中になってそれで僕も神社で祭られているなんてね。面白いよ」
「それでなのですか」
「後少ししか生きられないけれどそれでも最後まで生きるか」
 高杉は咳をした。そこから血を吐く。しかしそれでもまだ話す。
「死のうと思ったことは一度もないけれどね」
「生きて下さい、最後まで」
 女も高杉にこう言う。
「それが貴方のやるべきことですから」
「僕の夢が適っているんだ、是非やらせてもらうよ」
「夢ですか」
「うん、日本が一つになって」
 まずはこのことを話す。
「幕府が倒れて新しい世の中になるんだ。もう身分もなくてどんどん力をつけていくんだね」
「そうです。日本は大きく変わっていきます」
「それが僕の夢だったんだ。日本がそうなることがね」
「では」
「やらせてもらうよ」
 また言う高杉だった。
「最後までね」
「わかりました。それでは」
「帰るのかい?」
「はい、帰ります」
 そうするというのであった。
「今から。いいですね」
「わかったよ。じゃあ帰ろうか」
「はい」
 こうしてであった。彼等は元の世界に帰った。高杉は橋の上にいる。だがそこにいるのは彼だけでだ。女の姿は何処にもなかった。
 それに四条大橋の向こうはだ。今の時代のものだった。何の変わりもない。今の時代の街がそこにあるだけであった。 
 高杉はその足で同志達のところに戻った。しかし彼は何も話さなかった。
「何があったんだい、それで」
「そのことについて一言も話さないが」
「帰って来たのはいいにしても」
「何があったんだ」
「別に何も」
 笑ってこう返すだけの高杉だった。
「なかったけれどね」
「そうなのか
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ