2部分:第二章
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第二章
「きっとね。僕よりもね」
「君がそう言うのならいいが」
「なら行くのかい」
「行くぞ」
こう周りに話すのだった。
「もう決めたよ」
「そうか、じゃあどうなってもいいんだな」
「何処に連れて行かれても」
「それでもかい」
「どうせ面白くもない世の中だしな」
高杉の目は少し遠くを見た。
「向こうの方が楽しいかも知れないしね」
「それでか」
「それもあって行くのか」
「行くよ、それじゃあね」
こう言ってであった。高杉は席を立った。そしてすぐにその夜の四条大橋に向かうのであった。
京の夜は静まり返っている。闇の中に家や店が並んでいるが今は人もおらずあるのは闇だけである。四条大橋の辺りには見回りの新撰組も近寄らず当然志士達もいない。彼だけがそこに向かっていた。
そしてだ。その橋に足を踏み入れた。するとであった。
「もし」
前から女の声がしてきた。
「こちらに来られるのですか」
「うむ、そうだ」
高杉はその声に鷹揚に返した。木の橋の上には今は誰も見えない。
「その通りだ」
「左様ですか。それではです」
「頼みがあるのだが」
高杉は自分の方から言うのであった。
「いいか」
「何をでしょうか」
「まずは姿を見せてくれ」
こうその女の声に告げた。
「いいか」
「姿をですか」
「君の姿は今のところ何処にも見えない」
橋にいるのは彼だけである。その他にあるのは闇だけだ。その他には何も見えはしない。それではこう言うのも彼にとっては当然だった。
「よかったらまずは姿を見せてくれ」
「わかりました」
それに頷くとだった。高杉の目の前に黒髪の見事な美女が出て来た。切れ長の目を持っていて白い着物を着ていた。その着物は。
「死に装束か」
「そうです」
女もそのことを認める。切れ長の目はあくまで黒い。
「その通りです」
「ふむ、そうか」
「驚かれないのですか?」
「特にな。服で驚いたりはしない」
高杉はそれはないというのだ。
「しかし。その服を着て僕の前に現れるとは」
「何でしょうか」
「君は死人なのか」
彼が問うのはこのことだった。
「それとも。死霊なのか」
「そのどちらでもありません」
女は高杉の今の話は否定した。
「そうではありません」
「ふむ。死んではいないのか」
「お迎えをしますが」
それはするというのである。
「つまりです。私は」
「あれか。お迎えの死神か」
高杉はここで納得した。手は悠然と組みそのうえで左手を顎に当てている。そうしてそのうえでその女の話を聞いているのである。
「それなのか」
「そう思っておいて下さい」
これが女の言葉だった。
「わかりやすいですから」
「わかった。それではだ」
「はい」
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