第一部北領戦役
第十五話 参謀長との面会
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幕僚です、それなりに勉強していますよ。仰ぐ旗が同じであればと思うくらいに」
立場上、際どい言葉であるが。半分以上本気だった。〈皇国〉の将家の生まれではなく、〈帝国〉に産まれていたらそれはそれで、幸福だったかもしれない――貴族であればの話だが。
「――ですが、残念ながら私は皇国に産まれ、家族も友も主家も居ます、それなりに故国を愛しおりましてね。それでも相手の御国自慢を楽しみますが、その分、自分の御国自慢をする程度には愛郷心を持っています」
――純粋な愛国心は許される筈だ。問題なのは自尊心が現実に見合わない馬鹿が理想化された幻想国家に逃げ込む事だ。愛国を大義名分に他国を侮蔑し、進歩をやめ、亡国へと導く。
頷いてメレンティン大佐が語る。
「互いの忠誠の対象が違え、銃火を交えても相手への敬意を些かも薄めてはならない。
それこそが我々の守る最後の一線なのだろうな。」
――最後の一線、か。そうかもしれないな。
「――そうですね、社会を動かす根幹は人間同士の交流と交換です。
その潤滑油として相互の敬意こそが尊ばれるべきだと私は考えます。
そして、それは実績によって齎されるべきです。日常でも、政治でも、そして戦場でも。」
自国の村を焼かせた指揮官が略奪を推奨している軍の参謀長に言うのだから、皮肉なものだ。
「断然、同意する。それならば、何をもって貴官は自身の事を正当とするかね?」
諧謔味を滲ませた目で豊久を見る。
「私が参謀長殿に敬意を払われるべき存在とする理由ですか?」
豊久もにやり、と唇を歪めた。
――この質問の代償は豪華なディナーとスコッチソーダ、それに謎解きをしてくれるウェイターが居ないとならないが、まぁ上物の細巻に高級黒茶で勘弁するか。
「そうとも言えるな」
メレンティンの探るような視線に気づいた豊久は解析する、
――成程、焦土作戦を自国で行った指揮官である俺の価値観を探るつもりか。
「そうですね。大協約に反せず任務を成し遂げた事でしょうか。」
「例え、自国の村を焼き、町の穀倉を焼いても、かね?」
「不幸な事に敵軍はそれ以上の非道を恒常的に行っていたので。
敵軍の兵站破壊と自国民を大協約の保護下の都市への移送を両立する為に実行しました、その結果を実績としましょう。」
皮肉を交えて答える。
「成程、自国の村を焼いたのも互いに効率性を追究した結果か。」
当然ながら皮肉で返された。
俺は、無言で肩をすくめて逃げる。
値踏みする様に此方を見ながら言う。
「それならば貴官は私をどの様に評価するかね?」
――また妙な事を聞く。俺の心理テストでもやっているのか?
と内心、首をひねるが相手の好奇心を垣間見せる瞳を見て思い直す。
――ここは一つ仕掛けてみますかね。
「判断に必要な情報が欠け
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