31:一生後悔するよりも
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しかし、その道中……俺達は不運にもモンスターの群れに襲われていた。
相手は俺達にとってはザコばかりだが、今ばかりは群れを成して襲ってくるアルゴリズムが恨めしい。
しかも、アルゴリズムの影響か、もしくはただの偶然か……そいつらは安全マージンを確保しきれていないシリカを重点的に群れて攻めていた。俺達は彼女を庇いながら、その群れを薙ぎ払う形で戦うことになったが、彼女のHPはほぼ5割の注意域付近まで削られ、HPバーがイエローに変わるギリギリ一歩手前にまで減っていた。
だが、幸いにも無事にシリカ自身が最後の一匹のトドメを刺した瞬間のことだった。
彼女を中心に短いファンファーレが鳴った。シリカのレベルが上がったのだ。
しかし、今は急ぎの場なので、悪いがとても悠長に祝うことは出来ない。だが、アスナはポーチの中に手を突っ込み、そこから回復結晶を何個か摘み出してシリカに渡していた。
「レベルアップおめでとう、シリカちゃん。すぐ出発するから、お祝い代わりと言っちゃなんだけど、これですぐにHPを回復してくれるかな?」
「わあ、ありがとうございますっ。あたし、ポーションは充分にありますけど、回復結晶はまだ緊急用の分しか持ってなくって……」
笑顔でそれを受け取るシリカ。
その時だった。
俺は気付いた。
……彼女のHPは、先程よりもごくわずかに減少しており、イエローになっていたのだ。
なぜ――
――ジリリッ
なぜかは分からない。だがこの時、俺の頭の中で小さなスパークを起こり、無意識の内に脳内HDDをフル回転させていた。
――ここだ。
――考えろ。
――答えを導くヒントが、今、目の前にある。
――閃け。推理しろ。
そう言ってくる俺の直感が、俺自身に猛烈に訴えかける。
「ちょっと待ってくれ!」
「「え?」」
俺の制止の声に、二人がきょとんとこちらを振り返った。
「ど、どうしたんですか? いきなり……」
「今、シリカのHPがイエローに……」
「あー、あれね……」
俺の切羽詰った声に答えたのは、隣に立つリズベットだった。
「さっきシリカのレベルが上がったでしょ? それでHP最大値が上がったから、残りHPの割合がわずかに下がっただけ。今回はたまたま、それがグリーンからイエローへの境界を越えただけよ」
「えっ……? あ、ああ……なるほど。……そういう、ことか」
俺はシリカのHPバーを凝視する。それにシリカが戸惑いつつも結晶を使用してHPをフル回復させる。バーの右半分の空白が急速に埋まっていき、やがて一瞬だけバー全体が淡く光って最大値まで回復したことをプレイヤーに知らせる。
「てい
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