31:一生後悔するよりも
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「くそっ、なんでこんな事に……!」
俺は火急の勢いで装備と準備を整えながら、己への叱咤の念を感じながら部屋を飛び出した。
そこには既にアスナ達の三人が、俺の出発を部屋の前で待っていた。
急いで階段に向かう途中、ユミルの部屋の前にも立ち寄ったが、ドアノブをタップすると【空き部屋】の文字が浮かび上がった。つまり、システム的にもこの中にはプレイヤーは存在しない事を意味していた。
「マーブルさんまで居なくなったのかっ? 居場所のサーチはっ?」
揃って早足で階段を降りながら、この中で唯一彼女とフレンド登録していたリズベットが沈んだ表情で首を振った。
「ダメ。フレンド登録も知らない内に消されてたわ……。それから、アスナが急いでNPC宿屋でも確認を取ってきたけど……」
「ハーラインさんとデイドさんも既に居なくなってたよ。情報を聞いてから失踪したかどうかは、分からなかったけど……」
「なら、まだ二人が死神である可能性もゼロじゃないのか……くそっ」
ユニコーン発見の情報を聞いても慌てずに俺達を待ってさえいれば、その時点で容疑が晴れたのかもしれなかったのだが……これでは、今日のユニコーン第一発見者が情報をばら撒く前から、どちらかがその場に居た可能性を否定できない。
俺は思わず舌打ちをしながらカウンターを抜け、ドアを開けて村の外へと出る。
ここからはダッシュで村の出口へ向かいながら、リズベットの口からライバルパーティが撒いた情報を頭に詰め込み、アスナがその情報から割り出した発見位置を、俺のマップデータにも転送してくれた。
その発見位置は、俺やライバルパーティが昨日探索した方向とはまた別方向だったが、村から意外と離れていない位置だった。だが離れていないとは言っても、ダッシュでもここから数十分はかかる距離だ。ライバルパーティは今日、この方向へとユニコーン探索を進め、その途中に死神に襲われたということか。
「急いでその場所に向かうぞ!」
背から彼女達の返事を聞きながら、俺は歩を緩めずに村の出口の門をくぐった。
チラリと振り返ると、アスナは緊張した面持ちながらも涼しい顔で付いてくるが、リズベットとシリカは全力疾走で走っているのが見受けられる。
正直、これ以上のスピードですぐに現場へ向かいたいところだったが……俺やアスナは、彼女らがついてこられるだけのスピードにとどめて走らなければならない。付いてくる彼女らを引き離して行くことなど出来ないし、かと言って村で待っていてくれと言い聞かせても、きっと耳も貸してくれないであろうことも、もう目に見えていたからだ。
俺は彼女らが出し得るスピードの限りで、地を飛び蹴りつつユニコーンと……そして、死神が発見されたという地点へと向かった。
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