第五章
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他の檀家の面々そして住職と後で来た住職の妻と共にその料理を楽しんだ。大皿にあるそれはどれも確かに質素だった。
食材も調味料もだ、どの全てが普通のものでだ。
飲んでいる焼酎やビールもだ、その辺りのスーパーで売られているもので。
ごくありきたりの味だった、美食家である薬師寺にとってはつまらないものである筈だった。しかしこの料理は。
この上なく美味に感じられるものだった、それで祝田に言うのだった。
「これだけ美味しいものを食べたことは久しぶりです」
「そう言われますか」
「はい、お酒も」
コップの中の焼酎も飲みながら言った。
「美味しいです」
「そちらもですね」
「とても」
そうだというのだ。
「これだけ美味しいものは本当にないです」
「お気に召された様で何よりです。それに」
「それにとは」
「先生は本当の贅沢を知っておられますね」
ここでだ、祝田は薬師寺にこう言ったのである、
「贅沢、即ち美食を」
「本当のですか」
「真の贅沢、美食とは何か」
「ただ最高の店で最高の料理を口にすることではないのですね」
「そうです、それはです」
その贅沢、美食についてだ。彼は語るのだった。
「心によってなるものです」
「食べる人、そして食材等を用意する人達の」
「どの食材も作る人や手に入れる人、運ぶ人の手間があり」
「お布施やお供えにですね」
「心が入っています」
「そうした心が入っているからこそ」
「このお料理は美味しいのです」
ごく普通の料理の筈だがだ、それがというのだ。
「この様に」
「そうですね、心が入っていないと」
「どんなお料理も」
それが幾ら贅沢な食材等が使われていてもというのだ。そして最高の技術で作られたものであってもだ。
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