暁 〜小説投稿サイト〜
新説竹取物語
第六章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「そうさせてもらいます」
「そうですか」
「そこまでこの国がお好きなのですか」
「私の全てがありますので」
 だからだというのだ。
「この国にいます」
「そうですか」
「このことを伝えて下さるのですね」
「そうさせて頂きます、では」
 女は残念そうな顔になり首を横に振ってだ、そうして。
 供の者達の方を振り向いてだ、こう言った。
「帰りましょう」
「月ですか」
「帰られるというのですか」
「仕方ありません」
 今度は姫に顔を戻して言った。
「そうさせてもらいます」
「そうですか、では」
「帝には」
「私からお話します」
 是非にというのだ。
「その全てを」
「では」
「これより」
「姫、さようなら」
 ここでだ、女は姫にこう言った。そしてだった。
 供の者達を連れて去ったのだった。一行は静かに空に昇っていってだった。黄金の柔らかい光を放つ月の中に消えた。
 その全てを見届けてからだ、姫は翁と老婆に顔を向けて言った。
「お父様、お母様これからは」
「姫、本当にか」
「残ってくれたんだね」
「はい」
 この上なく優しい笑顔での言葉だった。
「そうさせて頂きます」
「そうなのか」
「わし等と永遠に」
「この国に留まります」
 そうするというのだ。
「お父様、お母様と一緒にいます」
「そう言ってくれるのか」
「何て有り難い」
 二人は涙を流しつつ姫に応えた。
「ではこのまま」
「家族で暮らそう」
「姫、そして翁と老婆には」 
 ここで帝も言われた。
「都に屋敷を用意する。そこで暮らすがいい」
「そうして頂けるのですか」
「わし等に」
「うむ、そしてその屋敷に」
 帝は今度は姫を見て言われた。
「朕も通いたいがいいか」
「はい」 
 姫は静かに帝のお言葉に応えた。
「帝のお気持ちはわかりました、そして」
「この国に留まることが出来た」
「そうなれましたから」
「だからか」
「是非。来て下さい」
「そうさせてもらうぞ」
「これまでお気持ちに応えられず申し訳ありませんでした」
 姫は帝にこう言って己の非礼を詫びた。
「無礼なことを言って」
「よい」
 だが、だった。帝は。
 微笑まれてだ、そのうえでこう姫に仰った。
「そなたにはそなたの事情があった」
「だからですか」
「この世におられるのなら仕方がない」
 帝のお気持ちに応えられないこともというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、気にすることはない」
「有り難きお言葉」
「それに朕はそなたの心に打たれた」
 こうも仰る帝だった。
「育ててくれた家族を心から想うそなたにな」
「お父様とお母様を」
「末永く暮らすのじゃ」
 その親達と、というのだ。
「よ
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ