第四章
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「だからな」
「諦めないでのう」
「わし等はずっと一緒じゃ」
「姫と共におる」
「姫がどの国の者でも構わぬ」
「どういった者でもな」
例えだ、どういった出自でもいいというのだ。
「姫と離れたくない」
「絶対に」
「だからな」
「わし等も姫を護る」
「お父様、お母様」
姫は自分を左右から護る二人の言葉を受けて涙を流した、そして。
二人を抱いてだ、こう言うのだった。
「私もです」
「姫もか」
「そう言ってくれるのか」
「はい、永遠にいたいです」
こう言ってだ、自分の親達を抱き締めてだ。
そうして夜空を見上げた、そこには満月があった。
その満月からだ、何かが来た。それは。
見事な服を来た男女の一団だった、その服はどれも金や銀に輝き五色が散らばめられている。烏帽子も単も見事だ。
その中央には車があり五色の毛を持つ牛に曳かれている。その一団を見て。
兵達はすぐにだ、帝と姫のいる部屋に入って来て言って来た。
「帝、遂にです」
「来ました」
「月からです」
「着飾った者達が来ました」
「部屋を開けたままにせよ」
帝は兵達の言葉を聞かれ眉を決したお顔で答えられた。
「そしてじゃ」
「その者達の姿をですか」
「御覧になられますか」
「うむ」
そうされるというのだ。
「これからな」
「では」
「その様に」
「うむ、頼む」
こう仰りだ、そのうえで。
帝は開けられた部屋からその外を御覧になられた、するとそれは兵達が見たものと同じものがそこにあった。
そしてだ、その者達が。
宮中の庭に降りた、そして。
その中から一際見事な十二単を着た美女が出て来てだ、こう言って来た。
「姫、おられますか」
「はい」
姫はその女に沈痛な顔で答えた。
「こちらに」
「そうですね、おられますね」
「そうです」
「では、です」
女は姫にあらためて言った。
「これより月に帰りましょう」
「何と、月と」
「月とな」
女の今の言葉にだ、そこにいた誰もが驚いて言った。
「姫はあの地から来たのか」
「本朝の方ではないと仰ったが」
「月の方か」
「あの地からの方だったのか」
兵達だけでなく翁も老婆も帝もだった。誰もが驚きを隠せなかった。しかしその彼等をよそにだ。女は姫のところに音もなく歩み寄り。
そしてだ、姫にこうも言ったのだった。
「では私の手をお取り下さい」
「姫、それは」
「それだけは」
翁と老婆がだ、すがるようにして姫に言った。
「わし等は永遠に」
「ここに」
「・・・・・・・・・」
姫は二人の言葉を聞きつつ俯いていた、そして。
ゆっくりとだ、その首を左右に振ってだ。それから。
女にだ、悲しみに満ちた顔で告げた。
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