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新説竹取物語
第二章

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「私は」
「そして次の満月の時に」
「その国に戻るというのか」
「そうです、いつも夢の中でそう言われていました」
 眠っているその時にというのだ。
「そしてです」
「その夢の中でか」
「言われていたのか」
「次の満月の時に帰る」
「姫が本来いた国に」
「竹の中に入りお父様に見付けて頂き」
 姫はこの時、翁と出会った時のことから話した。
「そしてこれまで育てて頂きました」
「姫はわし等の娘じゃ」
「そうじゃ、わし等の娘じゃ」
 二人は姫に自分達の偽わらざる本音を言った。
「その姫がいなくなるなぞ」
「考えられぬ」
「だからどうかじゃ」
「ここは頼む」
 姫に対してすがる様にして言うのだった。
「行かないでくれるか」
「ずっとわし等と共にいてくれ」
「そしてこの国で幸せになってくれ」
「よき方を夫君とされてな」
 このこともだ、姫に言った。
「そしてじゃ、子を為し」
「ずっとここにいてくれ」
「どうかじゃ、頼む」
「わし等から離れないでくれ」
「私もです」 
 姫は何時しかだ、涙を流していた。そしてそのこの世のものとは思えぬ整った顔の頬を濡らしつつ言うのだった。
「お父様ともお母様ともです」
「そうじゃな、離れたくないな」
「そうじゃな」
「ではじゃ、どうか」
「ここはな」
「しかしです」
 それでもというのだった。
「このこともです」
「どうしてもか」
「出来ぬのか」
「次の満月の時になれば」
「行かねばならぬのか」
「はい」
 そうだとだ、姫は涙を流しつつ答えた。
「そうなのです」
「何ということじゃ」
「何故そんなことになるのじゃ」
 二人も嘆き悲しむばかりだった。
「何故姫と離れなければならぬ」
「娘だというのに」
「どうにかならぬのか」
「離れたくない」
 二人はどうしても諦められなかった、それでだ。
 帝にもこのことを話した、すると帝もこう仰った。
「わかった、朕もだ」
「はい、帝も」
「そうお考えですか」
「姫に傍にいて欲しい」
 心からのお言葉だった。
「是非」
「ではお力を」
「お力をお貸し頂けますか」
「姫をこの国に留めて頂ける様に」
「その様に」
「うむ」
 帝は確かなお声で答えられた。
「そうさせてもらう」
「では」
「お願いします」
「兵を集める」
 帝は確かな声で仰った。
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