第三章
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何故帯が蛇になったのかわからなかった、しかし。
儒学者の荻生徂徠がだ、こう言ったのだった。
「それは左道でありましょう」
「左道か」
「はい、間違いなく」
こう老中の柳沢吉保に言うのだった。
「伝え聞くところによりますと」
「ではその町人の女房の帯をか」
「左道で蛇に変わる様にしたのです」
「その帯を女房に巻かせてか」
「後はその帯が蛇になり」
「襲う」
柳沢も言った。
「そういうことか」
「おそらくは」
「ではその帯を蛇に変えさせたのは女房に恨みを持つ者じゃな」
柳沢はそのことをすぐに察した。
「そうなるな」
「そうかと」
「わかった、では奉行に話しておこう」
「ここまでわかればですな」
「後は容易い」
この騒動はすぐに終わるというのだ、実際にだった。
ここから先は速かった、おかよに恨みを持つ者としてすぐにおきよの名前があがりおきよは捕らえられた。そのうえで吟味すると全てがわかった。
「全く、何ということだろうね」
「おかよさんに伸太さんを取られたって逆恨みして」
「それで糞坊主に左道を頼んで帯が蛇になる様に術をかけてもらって」
「その帯をおかよさん達の家に放り込んでおいた」
「とんでもない奴だよ」
巷で忌々しげに話された。
「そんなことをしてまで伸太さんを手に入れたいのかい」
「全く浅ましい」
「その坊主も坊主だけれど」
「腐った女だね」
「全くだよ」
こう話すのだった、そしてその左道を行った坊主も捕らえられ二人共処罰された。殺してはいないので罪一等を減じられて坊主は島流しになりおきよは牢に入れられたが。
程なくして獄死した、その死に方は。
伸太が晩飯の時にだ、こう女房に話した。
「おかしなことにな」
「どうして死んだんだい?」
「ああ、蛇に噛まれて死んだらしいんだよ」
「牢の中でかい」
「そうさ、伝馬町の中でな」
そうなったというのだ。
「おかしなことだろ」
「伝馬町に蛇が入り込むなんてね」
「ないからな、だから伝馬町の中でも不思議がってるそうだ」
「蛇にねえ」
「あれじゃねえのか?」
伸太は飯をおかずの鰯を焼いたので食べつつこう言った。
「あの女おめえを蛇に変わる帯でどうにかしようとしただろ」
「左道でね」
「それだよ、人を呪わばっていうだろ」
「穴二つだね」
「それでじゃねえのか?」
こう考えて言うのだった。
「あの女はな」
「蛇に噛まれて死んだんだね」
「そうじゃねえのか」
「そうかもね、昔から言うからね」
「人を呪うとな」
まさにというのだ。
「穴二つってな」
「その通りだね、だから蛇に噛まれて死んだんだね」
「その毒で自分がな」
伸太は晩飯の白い飯の味を楽しみつつ女房に言うのだっ
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