第二章
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「それだったらな」
「別にあたしが着けてもいいっていうんだね」
「ああ、いいだろ」
「そうなのね」
「今日着けてみたらどうだよ」
「そうしてみようかね」
おかよも亭主の言葉に頷いた、それでだった。
この日はその蛇柄の帯を巻くことにした、そのうえで洗濯やら何やらをした。それで井戸に水を汲みに行くとだ。
女友達、女房仲間がだ、その帯を見て言ってきた。
「あれ、またね」
「また面白い帯ね」
「蛇柄の帯なんてね」
「面白いじゃない」
「何か家の中にあったのよ」
おかよもその帯を見せつつ話す。
「急に見付けたけれど」
「あんたのお袋さんが持ってたのが紛れ込んでたんじゃないの?」
「それか姉さんのね」
「そうしたものじゃないの?」
「うん、亭主にもそう言われたよ」
おかよは朝の伸太とのやり取りのことも話した。
「だからね」
「別に着けてもいいしね」
「結構似合ってるわよ」
「そうした柄の帯もいいね」
「洒落た感じで」
「皆がそう言うんならね」
おかよも悪い気がしなくて笑顔で応えた。
「着けるよ」
「そうしなよ」
「いい感じだし」
女友達も明るく言うだけだった、それでおかよはこの日その帯を上機嫌で着けていた。しかしそれでもだった。
昼に自分達の部屋の中で飯、白い御飯と若芽の味噌汁に漬物で食べているとだ、急に。
帯がむずむずとしだした、そして。
その帯がだ、急にだった。
蛇になり襲い掛かって来た。それで。
おかよは慌てて部屋を出た、しかし蛇はそのおかよを追って来た。それを見た長屋の者達が目を見開いて騒いだ。
「な、何だあの蛇は」
「あんな黒くて大きな蛇見たことないぞ」
「何でおかよさんを追うんだい」
「あれは何だ」
「ちょ、ちょっと急に帯が蛇になって」
おかよは長屋と長屋の中を駆けてその蛇から逃げながら長屋の面々に説明した。
「襲い掛かって来たんだよ」
「帯が蛇に!?」
「何だそれは」
「蛇が化けものだったのか!?」
「どういうことだ」
「とにかく蛇が襲って来て」
おかよは慌てて逃げつつ言うしかなかった。
「このままだと」
「とにかくあの蛇を何とかしないと」
「ああ、駄目だな」
「さもないとな」
「大変なことになるぞ」
「おかよさんが危ない」
皆こう言ってだった、そのうえで。
慌てて包丁やら鉈を持って来て蛇にかかった、そのうちの鉈の一つがおかよに今にも噛みかからんとしていた蛇のその胴を真っ二つにした。すると。
蛇はすぐに元の帯に戻った、二つに裂けていたが。
その帯を見てだ、誰もが首を傾げさせて言った。
「何だ、一体」
「帯になったぞ」
「いや、帯に戻ったっていうか」
「あの蛇は帯だったのか」
「そうだったのか
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