偵察中の森の中で
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ていたが……」
茂みから事の次第を事細かに観察するヴォルフと神無。尤も、神無は音を出すものの正体を知って唖然としていているが……
湾曲した一対の大きな角、前屈みの体、短くて細い前足と対照的に大地を踏みしめる大きくて太い足、背中にある二つのコブ……極めつけは、まるで巨岩か大槌か? と疑いたくなるような異形の尻尾だ。
ドボルベルク
それが、大地に響く大音量を発しているモンスターの名だった。
ヴォルフが反応した振動は、この獣竜種のモンスターが異形の尾で殴打する音だったのだ。
彼の記憶にあるモノとは少しばかり違いがあった。ヴォルフの知るドボルベルクの体色は、砂や岩山か泥のような赤茶色のような色で、この個体の色は緑をはじめとした森の色であり、自身を隠す保護色である。
更には尾の形状に差異がある。過去に遭遇したそれの尾は、無骨な斧を思わせる形状だった。
尤も、ヴォルフの知るドボルベルクは砂漠に適応した亜種であり、彼は先にこちらに遭遇している。
「しかし、奴は一体何を叩いている?」
ヴォルフはドボルベルクの叩いている物に注視する。身を守る為の武器であり、主食である木々をへし折る為の道具でもある尾が叩いているそれは大きな岩だ。
巨体とパワーに似合わず、草食種であるこの獣竜種が岩を叩く理由……気が立っている?
握り拳に米粒がギリギリ通る程の僅かな隙間を開けて、ドボルベルクが叩いている大きな岩を注視する。
灰色の、取り分け特に特筆するべき物等無い、ただの岩だ……獣竜の尾が叩く角度を変えて、横合いから遠心力を付けて叩き付けた。
その際に、碧い外殻のような何かと、見違えようのない白い体毛が見えた。
「ここに居ろ」
気付いた時にはそう口にしていた。
「え?」
神無が驚いたような声を上げるが、今はそれどころではない。
弾みで神無の姿を見咎められないように少しばかり迂回してから、ヴォルフは茂みから出た。丁度、ドボルベルクの正面に当たる位置に。
ドボルベルクも後方ばかりに視界を向けていたわけではない。何より、ドボルベルクは草食種だ。その特有の視界の広さは健在だろう。
すぐにヴォルフの姿を捉えて真正面から見据える。
目と目が合う。円ではあるが陰気さが漂う目と、猛禽類のような獰猛な光が宿った目が交差し―――――――
『グモオオォォォォォォォォォ!!!!!!』
排除すべき対象を認識した尾槌竜ドボルベルクが、大地に響く重い咆哮を上げた。
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