偵察中の森の中で
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ったかのように嗜める。
「……えっと……」
状況確認其の壱……今の神無はヴォルフの胸元に抱きつくようにしがみついている。
状況確認其の弐……ヴォルフの胸板は細身な割に分厚く、硬い筋肉の感触と、衣服越しに高めの体温どころか、実に落ち着いた心臓の鼓動まで伝わってくる。
状況を完全に把握した神無の顔が、瞬時に赤く染まった。
「ふええ!? ご、ごめんねヴォル君! 今放れ……キャッ!?」
慌てて離れた為に体制を崩して、今度は仰向けに倒れ……込む前に伸びてきたヴォルフの手が神無の腕を掴んだ。
「慌てるな。怪我をしたら元も子もない」
ヴォルフはそう言いつつ、神無の腕を引いて立たせた。
「うう、ごめんねヴォル君」
「構わんよ。仲間というものは互いに助け合うものだろう?」
「あ、うん。ありがとうヴォル君」
ヴォルフの言葉が嬉しくてつい微笑んでしまう。彼から仲間という言葉が自然に出てきたのは、実に嬉しかった。
「行くぞ」
「あ……」
歩き出したヴォルフに軽く引っ張られる形で歩き出す神無。腕がヴォルフに握られたままだ。
唐突な事でイマイチ反応しきれていない神無だったが……ヴォルフはそれに気付いて振り返った。
「ん? こうした方が良いか?」
と、神無の掌を握った。
神無は自分の頬が急激に熱を持ち始めたのが分かった。
「えっと……ヴォル君?」
「これなら転びにくいと思うが……放した方が良いか?」
「ありがとうヴォル君」
手を放そうとしたヴォルフの掌をしっかりと握り返しながら言う。ヴォルフから手を握ってきたくれたのが、神無には嬉しかった。何となく、彼の暖かさを知る事が出来た気がした。
森を抜けた先には川があった。
川といってもそれは小さなもので、入った所で深さは膝まで無いだろう。水面から水底が見えており、小さな石が無数に敷き詰められているのが良く見える。
周囲にモンスターの姿は無い。このような場所はモンスター達にとっても水飲み場となり得る場所だが、今の所は鳥が水を啄ばむように飲んでいたり、その鳴き声が音楽のように周囲に響き渡っている。
「……よし、ここで休もう」
ヴォルフが周囲を確認し、最後に背後を振り返って神無の姿と通ってきた森の奥を確認してから告げた。
「うん!」
神無は頷いて森から出てきた。
「薪を集めようか?」
「ううん。大丈夫。すぐに食べられる物を用意してきたから。取り敢えず手、洗おっか?」
「そうだな」
二人は川に近付いて、手甲と手袋を外して水に手を入れる。その水は氷のように冷たく、手袋の中で蒸れた掌には心地よく、森の中で付いた汚れを洗い流して行った。
「わあ冷たいっ! 気持ち良いー!」
神無のようにはしゃぎはしなかったがヴォルフも同感だった。水の冷た
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