第一章
[2]次話
使わない兵器
徳川家康はそれを見て会心の笑みを浮かべていた。
「この砲でな」
「はい、大坂の城を」
「あの城を攻めますな」
「まさに国崩しよ」
家康はその大砲を見つつ言うのだった。
「どの様な城もな」
「あの大坂城でさえ、ですな」
「崩してしまいますな」
「その力で」
「そうじゃ、確かにあの城の堀は深く広い」
それもまた大坂城を堅固なものにしていた、大坂城はまさに天下の城だ。
しかしだ、その天下の城もだというのだ。
「それでもその大坂城もじゃ」
「この大砲さえあれば」
「攻め落とせますか」
「あの城でさえ」
「出来る。とはいっても攻め方次第じゃ」
家康はただ大砲があればそれで勝てる、大坂城を攻め落とせると思っていなかった。それだけそう思える程家康も愚かではない。
それでだ、傍に控える旗本達に言うのだった。
「あの城の何を攻めるかじゃ」
「ただ攻めるだけでなく」
「それもですか」
「大事だと」
「大御所はそうお考えなのですか」
「うむ、では戦の時は工夫をしよう」
その攻め方をというのだ。
「そういうことじゃ」
「では」
「その時は」
傍に控える旗本達も応える、そしてだった。
程なく大坂で戦となった、徳川と豊臣の戦もっと言えば家康が豊臣家を滅ぼす戦がはじまった。そこで家康は大軍で大坂城を囲まさせた。
勝手に攻めたがそれがだった、真田丸で追い返され。家康は迂闊に攻めずその大砲を出してそれでだった。
大坂城に向けて撃たせた、だが。
「大御所、やはりです」
「大坂城の堀は広いです」
「ですから中々です」
「城の中まで届きませぬ」
「届く弾もありますが」
「その多くはです」
城の中まで届かないというのだ、だが。
家康はそれでもだ、こう言うのだった。
「それでもじゃ」
「このままですか」
「砲を撃ちますか」
「それを続けますか」
「撃っても多くは届かぬのはわかっておった」
それは最初からというのだ。
「だからじゃ」
「このままですか」
「撃たせるのですか」
「そうされますか」
「別に城の櫓や壁や門を崩させぬ」
大砲の本来の役目も頭に入れていなかったというのだ。
「攻めるのは人じゃ」
「人、ですか」
「城の中の」
「城を攻めるより人を攻める方がよい」
孫子にある言葉だった。
「そちらが上計というな」
「その為の大砲ですか」
「そうでありましたか」
「見ておれ、こうして撃ち続けていればな」
それで、というのだ。
「きっと我等によいことがあるわ」
「そうですか」
「これで、ですか」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「この戦に勝つ」
必ず、というのだ。
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